地図を立体視する ―地図は浮き上がって見えなくてはいけない―
地図を立体視する ―地図は浮き上がって見えなくてはいけない― 出典 : 風景あるくの記 pp.124-126.

 地図の立体視とは二枚の地図を左右に並べて立体鏡で見ることではない。 ジーッと見ているうちに模型のように浮き上がってみえることで,なれてくると模型以上に細かく,小さい山のかげや,一寸した丘の凹みまでが実際と同じように見えてくる。

 さらになれてくると浮き上がって見えた図をもとにしてそれをスケッチすることもできる。 ここまでくるには相当の修練がいるが,出来ない問題ではない。五万分の一や二万五千分の一の地形図はこの程度までみえるのが本当なのである。 これが地図を読む(Map Reading)基礎の段階であって,記号や高さがいくらわかっても意味がない。

 地図を早く読めるようになるにはスケッチをした方がよいと前の章で書いた。 第51図は私の描いたスケッチ,これは富士山北麓忍野付近から北の方を見て描いたもので写真撮影は500メートルばかり東寄りだが両者を比べてみると,その差がよくわかる。 -中略-

 忍野村からのスケッチの解説をすると中央に大きく描いた山塊の真中が杓子山(しゃくしやま)その右が鹿留山(ししどめやま),左が高座山(たかざやま)で,杓子山と鹿留山の間の尾根は岩石が露出しており凹凸の激しい部分,背の低い黒い針葉樹が岩肌に生えている。 高座山は山頂付近まで茅の類で覆われ木は見られない非常になだらかな女性美的曲線の山で,この三つの山頂からそれぞれ特有の尾根が出ている。 その尾根に,また谷が刻まれている。 尾根と尾根のの間には扇状地が発達している。 侵食の結果谷の奥から山麓に向かって流れだした物質が扇状に拡がった。 それでこの小さな谷の出口から放射状の線を入れてみた。

 つまりこの山々の麓をつくっているのは山体上部を侵食した物質によってでき上がっていると解釈した。 その面は水田化され,階段状に耕作されている。 また,手前の黒い森は鷹丸尾溶岩流とその上に密生した樅の森林である。 -後略-


第51図 富士山の北麓忍野村付近のスケッチ
Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 現場での地形スケッチ(例)第51図
  • 恐らくここでスケッチしたのだろうという場所を想定し,その場所を視点とした三次元写真です。 写真そのものは,国土地理院の航空写真です。
  • 川崎氏が「高座山は山頂付近まで茅の類で覆われ」と1959年に見た風景は,最新の空中写真(年月不詳)でも,ほぼ同じであることがわかります。
  • しかし,「杓子山と鹿留山の間の尾根は岩石が露出」については,大きな木が繁茂しているせいか,よくわかりません。
  • また,扇状地での水田はほぼ全てが放棄地となり,新たな木々が生えているので,スケッチに描かれている扇状地は判別しづらくなりました。
地図を立体視する ―地図は浮き上がって見えなくてはいけない― 出典 : 風景あるくの記 pp.130.

 山に行きスケッチを常日頃やっていると,地形図を見ただけで,山ひだが頭に浮かんでくるようになる。 こうなったらしめたもので,こんどは実際にその土地に行かなくとも地形図を眺めただけでスケッチができるようになる。

 世界のどんな土地でも地形図さえあれば十分たのしめる。 ラインの峡谷もアルプスも,ロッキーも,ゆう然として地形図から浮かんでくる。 なんと素晴らしいことではないか。

 第53図の甲府盆地付近と,浅間山付近はこうして描いたもので,このような状態に見えるところまでいくには,飛行機にでも乗らないと行けない。  -後略-

Kashmir 3Dによる「風景あるくの記」の再現 : 三次元的に表現した「浅間火山地質図」

第53(右)と同じような場所(空間)から見た,という想定で作成した三次元の「浅間火山地質図(5万分の1)」です。
本図についての詳しい解説があります。 下記の参考情報からアクセスしてください。
【参考情報:片眼で立体視】 地図を浮き上がらせる方法

以前ここに掲載していた情報は 「片目での立体視ページ」 として独立させました。 お手数ですが,リンク先までお願いします。

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