表層崩壊について
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表層崩壊とは
日本では,山地斜面の表土層は,一般的に森林として土地利用されています。
 樹木の地表部を除くと,腐食土層,溶脱層などの土壌の構成要素と,基盤岩の風化が進んだ風化層がその構成要素と考えられます。

 一般に,風化層の厚さは尾根に近いほど厚く,谷に近いほど薄いことが知られています。 基盤岩が風化していない谷部では,硬堅な基盤岩の上の土壌層が表層なので,同じ表層が崩壊してもそのボリュームは小規模なものに留まります。
 しかし尾根付近での表層崩壊は,土壌層と共に強度の小さい風化層も巻き込んで起きるので崩壊深度が深く,より規模の大きなものとなりやすい傾向があります。

 表層崩壊は,地質や基盤岩の種類を問いません。 また,風化層の厚い尾根部での発生は,土石流のトリガーになりやすい,という特徴があります。
 しかし一方では,岩石によって風化速度や風化生成物の粒径は異なっています。
 どのような材料で土石流が構成されるのか,あるいは崩壊の深度といった具体的検討を行う場合は,このような点に十分留意する必要があります。

 パイピングホール についてはこちら
表層崩壊という脆弱性(リスク)を持つ地盤の特徴(一部重複掲載)
微 地 形 条      件
斜面の傾斜 傾斜角が概ね30度以上の斜面は崩壊しやすい
傾斜の状況 標高の低い方が急傾斜である斜面は崩壊しやすい(遷急線が高いところにある)
谷型の斜面 凹地など,地表水が集まる地形を持つ斜面は崩壊しやすい
集水面積 集水面積が大きい場合は,斜面崩壊の可能性が高くなる
上方が緩傾斜 斜面の上方に平坦地がある場合は,斜面崩壊の可能性が高くなる
人工的な地形改変により斜面上方に平坦地を造成すると,斜面は崩壊しやすくなる
地質状況 特定の地質との関連性は薄い(どんな地質でも発生する
表 土 層 大きな間隙率を持つ土壌などが雨水で飽和すると,崩壊の可能性が高くなる
表土層が厚くなると崩壊の危険性は高くなる。 表土層の厚さ: 概ね2ないし2.5m
流れ盤構造 地層が斜面側に傾いていることを言うが,この構造は地層境界面ですべりやすい
不透水層の存在 地盤に浸透した地下水が不透水層で遮られ,斜面に流れ出るため境界面ですべりやすくなる。 流れ盤構造では,相乗効果によって崩壊の危険性が更に高くなる
植生の影響 ある。 2013年10月に発生した伊豆大島の表層崩壊がその例

表層崩壊の例(2013年10月伊豆大島,2014年8月広島市)
それぞれの写真の部分をクリックすると,出典先で公開されている写真をご覧いただけます。

(左)2013年10月に伊豆大島で発生した表層崩壊の写真と発生の状況      (右)2014年8月に広島市安佐北区で発生した表層崩壊の写真と模式図
模式図は, 「4 学会合同調査団および文部科学省科学研究費による調査報告会資料」などを参考に当機構が作成しました
★伊豆大島のケースでは,1338年に噴火した元町溶岩層の上には,堆積した水を殆ど通さない「レス層」があり,表土としては三原山の噴火による「降下火山砂(水を通しやすい)」が堆積しています。 植物の根系は,レス層(不透水層)は硬いので侵入できず,表土層の中でのみ生育するので,土砂を止める杭としての作用は殆ど期待できないそうです。 根系は枯れると「パイピングホール」を形成することが有りますが,この崩壊現場でも実際に確認されています。
 上記調査団の結論は,連続雨量800mmを超える大雨と,レス層の遮水効果で表土層の地下水位が急激に上昇し,表土層の最下面に「みずみち」が形成され摩擦係数が低減するので,表土層-レス層の境界面をすべり面とする表層崩壊が発生した,という説を採用しています。 詳しくは,上記「4学会・・・・」を参照ください。
 注 レス : 降下火山灰の風成層(一度堆積した火山灰の細かい粒子が風で舞い上がり,地表に少しづつ降り積もってできた土)のことで,「関東ローム」や「黒ぼく」と呼ばれる方がなじみがあります。 中国からの「黄土」もレスの一種です。
★広島市のケースでは,花崗岩の風化生成物であるマサ(まさ土)が問題とされています。 花崗岩は肉眼でも見える等粒状の結晶が,角砂糖のように寄せ集まったものです。 風化が進み,結晶粒子間の結合力が消失してしまうと,砂のようにばらばらになりやすいのです(マサ)。 また,花崗岩の風化は,花崗岩内部の節理と呼ばれる立方体の割れ目から中心部に向かって進行するので,立方体の中心部には未風化岩塊が残ることがあります。
 このケースでは,崩壊により新鮮な花崗岩が露出します。 地質的年代で比較的短い時間(100年単位)に風化が進んで「まさ土」になるので,この下の解説にあるように,自然のままに任せておくといずれ再び表層崩壊が発生します。

表層崩壊における繰り返し

出典: 「かだいおうち シラス災害」ウェブページ 
★「表層崩壊は,崩壊後ある一定期間後に再び崩壊する」,という報告があります。 当機構の元会長であった「岩松 暉氏」が勤められていた鹿児島大学理学部のウェブページ「かだいおうち」には,この「崩壊輪廻」に関する詳しい説明が掲載されています。 上図の出典先のリンクをクリックしてください。
★この繰り返し現象は,広島市での表層崩壊に当てはまります。 花崗岩は風化しやすく,粗い粒子を持つ「まさ土」になるからです。

特殊土による表層崩壊について
ぼら(ボラ)と「ぼらすべり」
 ぼら(ボラ)とは「降下軽石」のことで,火山から噴出された軽石が堆積して形成されました。 噴火当時の地形に平行に堆積する,という特徴があります。 軽いものは遠くまで飛び,重いものは近くに堆積するので,同じ場所には粒の揃った軽石が堆積します。
 お風呂で使う軽石で想像できるように,極めて空隙が多いため,地下水の良好な通り道になります。 鹿児島県では「しらす(シラス)」の上に堆積しているのが一般的ですが,このしらすは「非溶結火砕流堆積物」で火山ガラスの粒子が不揃いで角があるため,比較的硬固結しているので,水を余り通しません。
 また,シラスの上に「古土壌」が分布していると,この土壌は難透水層の役割を担うので,その上部のぼら層最下部が地下水の通り道になります。
 このため,ぼらがすべり層となって崩壊(ぼらすべり)することがあります。 詳しくは 「かだいおうち シラス災害」ウェブページをご覧ください。

パイピングホールの見本
 100mm近く降った大雨の後,畑に見事な穴が開いていました。
 耕耘機の轍に溜まった雨水が行き場を失い,地中に潜り込んだモノと思われます。

 地中の垂直方向に緩くなっている部分を,大量の水が流れ込むとどうなるか,という見本です。

 土壌はローム質で,ネギやゴボウを育てるため,かなり深くまで耕されています。
表層崩壊に関する主な参考文献・資料・ウェブサイト
☆(一社)全国地質調査業協会連合会: 九州地方における最近の道路災害の特徴,道路防災点検技術委員会,講習会資料
☆玉田 文吾,集中豪雨と斜面崩壊, みどりの風第10号,(NPO)日本環境土木工業会ウェブサイト
以下,調査中です。
(執筆・編集)地質情報整備活用機構