土砂災害全般について
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土砂災害とは
 土砂災害とは,斜面崩壊(崖崩れ,表層崩壊及び深層崩壊),土石流及び地すべり,あるいは火山噴火に伴う溶岩流,火砕流及び火山泥流などにより,人命や財産・インフラなどが脅かされる自然災害の総称のことです。 以下のように区分されます。
 土砂災害
  ┣ 斜面崩壊(崖崩れ,山崩れ,急傾斜地崩壊)
  ┃  ┣ 表層崩壊: 表面土層のみ崩壊する現象です。 どの地質でも起こりうる,という特徴があります。
  ┃  ┗ 深層崩壊: 表面土層と風化岩盤が一体となって崩壊する現象です。 表層崩壊に比べ崩壊規模が格段に大きいことが特徴です。
  ┣ 土 石 流 : 斜面で崩壊した土砂が多量の雨水や渓流水と混じり合い,渓流に堆積していた土砂をも巻き込んで流動化して流れ下る現象です。
  ┣ 地すべり : 斜面が重力により移動する(すべる)現象です。 斜面崩壊に比べ,運動速度が遅いという特徴があります。
  ┗ 岩盤崩落: 亀裂が伸展するなどにより,岩(石)塊が崩落する現象です。 北海道,豊浜トンネルの岩盤崩落事故で有名になりました。
斜面崩壊と地すべりの見分け方

出典:(公社)砂防学会 特別講演集「深層崩壊を考える」
斜面崩壊という脆弱性(リスク)を持つ地盤の特徴
微 地 形 条      件
斜面の傾斜 傾斜角が概ね30度以上の斜面は崩壊しやすい
傾斜の状況 標高の低い方が急傾斜である斜面は崩壊しやすい(遷急線が高いところにある)
谷型の斜面 凹地など,地表水が集まる地形を持つ斜面は崩壊しやすい
集水面積 集水面積が大きい場合は,斜面崩壊の可能性が高くなる
上方が緩傾斜 斜面の上方に平坦地がある場合は,斜面崩壊の可能性が高くなる
人工的な地形改変により斜面上方に平坦地を造成すると,斜面は崩壊しやすくなる
表土が厚い 大きな間隙率を持つ土壌などが雨水で飽和すると,崩壊の可能性が高くなる
流れ盤構造 地層が斜面側に傾いていることを言うが,この構造は地層境界面ですべりやすい
不透水層の存在 地盤に浸透した地下水が不透水層で遮られ,斜面に流れ出るため境界面ですべりやすくなる。 流れ盤構造では,相乗効果によって崩壊の危険性が更に高くなる

注 「表層崩壊の解説ページ」と「深層崩壊の解説ページ」には,それぞれの特徴(リスク=脆弱性)を付記した表を掲載しました。
斜面崩壊のメカニズム
 斜面は,重力によって斜面の傾斜する方向に引っ張られています。
 その力(張力)は,「表層地盤の質量が大きいほど」,また「斜面の傾斜が大きいほど」大きくなります。
 斜面の中では,この張力に対する抵抗力として,「粘着力」と「摩擦抵抗力」が存在しています。 今,「張力 < 粘着力+摩擦抵抗力(垂直応力×摩擦係数)」である限り,斜面の崩壊は発生しません。
 しかし,地震加速度による張力の瞬間的な増大や,雨水の浸透による摩擦抵抗力の低下などが発生すると,上式のバランスが狂って,斜面崩壊が発生する可能性が高まります。
土砂災害警戒区域・同特別警戒区域と土砂災害危険区域と危険回避のために
土砂災害警戒区域
  「土砂災害防止法」に基づいて調査が行われ,「土砂災害のおそれがある区域」として指定・告示された区域のことです。 調査は,原則として1/2,500地形図が使用されます。 指定された地域に対しては,警戒避難体制の整備(行政と住民),すなわち,避難所の設置や避難路の整備などが自治体の予算で行われます。
土砂災害特別警戒区域
 同じく調査が行われ,「建物が破壊され人命に大きな被害が生ずるおそれがある区域」として指定・告示された区域のことです。 調査は,上記と同じです。 指定された区域に対しては,自治体が避難所の設置や避難路の整備などを行いますが,民間側では「特定の開発行為に対しての許可が必要となる」,「建築物の構造が規制される」などの制限が発生します。 このため,指定時に苦情を申し立てる住民が多く,了承が得られないため指定が遅れる,ということもあるようです。
土砂災害危険箇所
 道府県が指定する「土砂災害による被害のおそれのある箇所(土石流危険渓流,地すべり危険箇所,急傾斜地崩壊危険箇所,及び雪崩危険箇所)のことです。 調査は,1/25,000地形図が使用されるため,警戒区域と異なっておおよその範囲を調査した程度と考えた方が良いでしょう。 危険箇所という意味は,土砂災害の危険性がある,ということを住民に知らせるもので,法的な規制はありません。 危険箇所の全国的な調査は終了しているので,自分の身の回りにどのような地盤の脆弱性(リスク)があるのかを知るために,是非,以下のポータルサイトから自宅の場所の様子を調べてください。
危険回避のために
 「斜面崩壊という脆弱性(リスク)を持つ地盤の特徴」は,崩壊リスクの高い脆弱な斜面 の一般的な特徴を示したものです。 しかし,雨の降り方も一様ではないなど,他にも複雑な原因が絡みあっているため,このような特徴を持つ斜面の全てが,同時に崩壊することはあり得ませんが,逆に言うと具体的に度の斜面がそれに該当するか,という断言をすることも極めて難しいのも事実です。
 現状では,「どこに」と「いつ」発生するか,を予測することが極めて難しいので,このような脆弱な地形や地質条件を示す斜面やその直下に住居を構えたり,何かの作業を行う場合には,「崩壊するかもしれない」という想定を行っておくことが必要です。
 特に,ある程度降雨量の予測ができるようになった雨とは異なり,地震はいつ発生するかわかりません。 普段からの注意が必要です。
土砂災害全般に関する主な参考文献・資料・ウェブサイト
岩松 暉 かだいおうちウェブサイト, 崖崩れ(表層崩壊)や大規模崩壊(現深層崩壊)の解説記事有り。 ただし,氏の退官により現在は更新は停止されている
国土交通省 ハザードマップポータルサイト, 洪水,内水,高潮,津波,土砂災害,火山の各ハザードマップを公表しているウェブサイトのリンク集
土砂災害警戒区域・特別警戒区域,土砂災害危険箇所に関するポータルサイト ,国土交通省 水管理・国土保全局
土砂災害発生事例, 国土交通省 水管理・国土保全局    都道府県別土砂災害危険箇所, 国土交通省 水管理・国土保全局
(執筆・編集)地質情報整備活用機構