日本で最も雄大な岩の屏風 類型:自然
  屏風ケ浦(びょうぶがうら) 千葉県銚子市・旭市
【奇岩の写真】

地球の丸く見える丘展望館からの刑部岬と富士山。

銚子市三崎1丁目より東を望む。
写真下部の白っぽい地層が「犬吠層群」で,その上部は「香取層群」です。
【いわれ,特徴,エピソード等】
  • 固結の弱い岩質であることと,波の強さもあって,有史以来数キロメートルに渡って岸壁は削られています。
  • 鎌倉時代には源義経とかかわりが深い片岡常春の居城「佐貫城」があったと言われていますが,遺構は既にはるか沖にあります。
  • また,旭市と銚子市との境界付近にはかって通蓮洞と呼ばれる海岸侵食によるものと思われる洞窟も存在していましたが,現在ではほとんど埋没しています。
  • このように激しい海食によって1年に約1m海岸線が後退していたため,1960年代に消波ブロック(堤)の設置などの護岸工事行われました。
    消波ブロックの設置後,陸地後退は緩やかになりましたが,崖に草本が繁茂し始め,さらに九十九里浜の浸食との関連性も問題となっています。
  • 崖の上に広がる台地は,関東ローム層に覆われており,キャベツ畑が広がります。風の強いことを活かして30基以上の風力発電所の風車が稼働しています。
  • 岩が屏風を立てたように続いているため「屏風~」と呼ばれている岩体は多くありますが,銚子市の名洗町から旭市の刑部岬にかけて続く「屏風ケ浦」は,高さ約30-60m,長さ約10kmで,その大きさから日本で最も雄大な「屏風ケ浦」といえます。
  • この「屏風ケ浦」は古くからの景勝地でした。
    江戸時代,浮世絵師が描き,当時流行した「銚子磯めぐり」の終点であったことなど,昔からの地元の人々以外にも親しまれてきました。
【地形と地質の三次元イメージ】


20万分の1 シームレス地質図(出典,下記)

【奇岩とその周辺の地形と地質】

  • 「屛風ヶ浦」は,旭市の「刑部岬」を南西限とし,銚子市の「名洗町」付近を北東現とする,長さ約10kmの「海食崖」です。 高さは,約40m~約60mあります。
  • 新第三紀鮮新世以降の,比較的柔らかな地層が露岩となって続いています。
  • 南西端に近い「磯見川」と「不詳川」は,南流して太平洋に直接注ぎますが,それより銚子側の多くの河川は「利根川」の支流である,という地形上の特徴があります。
  • 屏風ケ浦では,新第三紀鮮新世~第四紀更新世に,やや深い海で堆積した「犬吠層群」を,古東京湾で堆積した「香取層(下総層群に相当)」と「関東ローム層」が「不整合」に覆っています。
  • 「犬吠層群」は北西に緩く傾斜しており,崖を東から西に進むと,水平方向に約300万年前から約100万年前に堆積した地層を連続的に見ることができます。
  • 屏風ケ浦の最下層である,犬吠層群名洗層の堆積年代は(ただし名洗層の下位は屏風ケ浦に露出していない)約500-200万年前で,屏風ケ浦遊歩道で観察できるテフラNa-G(Tn-GPに対比,2.5Maに噴出)付近に第四紀―新第三紀境界があると考えられています。
  • すなわち,地質年代の境界を,誰でも簡単に観察できる場所だといえます。
  • 屏風ケ浦の地層は新しく,固結が弱いことから,有史以来数キロメートルに渡って岸壁は削られています。
  • 崖には砂礫などで埋積された,かつての河川の断面をいくつも見ることもできます。
【引用写真】 屛風ヶ浦・核心部
【記事,引用情報,お断りなど】
【記事】
  • 奇岩「屛風ヶ浦」は,長さが10kmもある長大な「海食崖」です。 その意味で,奇岩かどうか,審査時には様々な議論が行われました。
  • しかし,比較的柔らかい岩盤(もしくは,固まり切れていない段階の堆積岩)が,太平洋の荒波に削られてできた,それも数キロメートルも後退しているらしい,という点で見た場合,稀有な場所であることは確かです。
【引用情報】
【参考情報】
【お断り】
  • 奇岩の位置については,地図検索のページをご覧ください。
  • 旧版において掲載していた「周辺のジオサイトや観光地」と「交通概況」については,情報が陳腐化してきたことから削除しました。 メジャーな検索サイトのご利用をお願いします。
【奇岩の位置座標】

座標データ: 140.8086045 : 35.7120391