長野県・山梨県:南八ヶ岳火山群
地形の特徴

火山地形,山体崩壊,山体崩壊,岩屑なだれ,侵食地形,溶岩円頂丘,日本百名山

地形の三次元イメージ : 南八ヶ岳火山群
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  • 「八ヶ岳」は,フォッサマグナの南北ほぼ中央で西端に近い場所に位置し,前蓼科山(2,377m)を北端とし編笠山(2524m)を南端とする,長さ約25kmの火山群です。 南北に長いことや山容が異なることから,一般的に「南八ヶ岳(火山群)」と「北八ヶ岳(火山群)」に区分されています。
  • 南八ヶ岳火山群は,夏沢峠(約2430m)より南の火山群のことを指しており,主な山頂を北から列挙すると,硫黄岳(2760m),峰の松目(2568m),横岳(2825m),主峰赤岳(2899m),阿弥陀岳(2805m),権現岳(2715m)や編笠山(2524m)などが含まれます。
  • 地質図情報を総括すると,南八ヶ岳火山群の主な活動時期は「第四紀・更新世・チバニアン期」であって,古期と新期に細分されます(下表参照)。
  • 南八ヶ岳火山群の概略活動史
トピック 推定年代 主 な 特 徴 な ど 
新八ヶ岳火山群の活動後 約13万年前頃~ ① 西暦887年8月22日,地震の影響で天狗岳の東面が崩壊し,岩石なだれが千曲川を堰き止めて天然ダムができました。
② 硫黄岳の北東側斜面の崩壊地形は,この地震の影響との説がありますが,諸説あって確定していません。
新八ヶ岳火山群の始動 ~約13万年前頃 ① 赤岳溶岩(A),現阿弥陀岳溶岩(Am),横岳火山岩類(Yl,Ym,Yu)が噴出した後しばらく経った後で,硫黄岳
 火山岩類(Ill,Iwt)が噴出しました。
② 一方,従来の火山列の西側で,溶岩円頂丘を形成する火山群が活動を開始しました。
  南八ヶ岳火山群では,編笠山溶岩(Am),美濃戸中山溶岩(Mn),峰の松目溶岩(M)が該当します。
③ 横岳溶岩が噴出した後で,峰の松目~硫黄岳~横岳~赤岳~阿弥陀岳で囲まれた広大な凹地が形成されました。
  しかし,その原因が山体崩壊なのか,激しい谷頭侵食の結果なのか,わかっていないようです。 文献もありません。
古八ヶ岳火山群の再始動 ~約15万年前頃 ① 古阿弥陀火山の崩壊後,真教寺山溶岩(Sl),馬蹄形カルデラ内の権現山火砕岩(G),西岳溶岩(Nl)や
 三ッ頭溶岩(Ml)などが噴出し,その後新八ヶ岳火山群へと移行しました。
古阿弥陀火山の崩壊 約20万年前頃 ① 古阿弥陀火山が山体崩壊を起こし,極めて膨大な量の「岩屑なだれ(韮崎岩屑流)」が発生しました。
 岩屑流は,始め古阿弥陀火山の南西方向に流れ,後に南東方向(釜無川沿い)に転じて甲府盆地末端まで流下ましした。
注 古阿弥陀岳の位置については,未だ確定していないようです。
古阿弥陀火山の成長 ~約20万年前頃 ① 古南八ヶ岳火山群の活動が最盛期を迎えました。
  中心は,現在の中岳付近と推測される 古阿弥陀岳火山 で,高さは標高3400mともいわれています(仮説)。
古南八ヶ岳火山群の始動 ~約25万年前頃 ① 古南八ヶ岳火山群が活動を開始したのは,約40万年前頃と推測されています。
 開始後,約25万年前頃までに「杣添川泥流」など,複数回の大規模な山体崩壊・岩屑なだれが発生したようです。
地形と地質の三次元イメージ : 赤岳(南八ヶ岳)とその周辺の東斜面
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  • 古八ヶ岳火山群の噴出物は,広い山裾を形成したのに対し,新八ヶ岳火山群の噴出物は現在の山頂部付近に留まっているのが特徴です。
  • 例えば,赤岳山頂付近の赤岳溶岩(A)は,新八ヶ岳火山体であり,山裾まで広がっている真教寺山溶岩(Sl)は,古八ヶ岳火山体の溶岩となります。
  • 県界尾根や真教寺尾根を含むほぼ並行する4つの尾根は,中腹より山麓に掛けてほぼ同じような傾斜をしていることから,真教寺山溶岩(Sl)は,当時広い平坦地だった場所を埋め尽くすように流れたのだろう,と考えられます。
  • 「杣添川・北沢」などの斜面(例 赤矢印)では,真教寺山溶岩(Sl)の上を横岳下部溶岩(Yl)が覆っています。
    横岳下部溶岩の噴火当時,既に谷地形だったと思われる「北沢」に,その横岳下部溶岩が流れ込んだはずです。
    しかし現在,谷底から横岳下部溶岩が消えているということは,その溶岩が削り取られてしまう程,川の侵食力が実に強大だったことを意味しています。
地形と地質の三次元イメージ : 赤岳(南八ヶ岳)とその周辺の西斜面
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  • チバニアン期の終わり頃(約25万年前以降)は,八ヶ岳火山体の南部(南八ヶ岳)では最も激しい噴火活動期にあって,中でも現在の「中岳」付近に標高3400mとも推定される「古阿弥陀岳火山(成層火山)」が形成された,と考えられています(位置については諸説あるようです)。
  • その古阿弥陀岳火山は,約20万年前に山頂の南側で大規模な「山体崩壊」を発生して,現在「韮崎岩屑流(古くは泥流)」と呼ばれている,過去最大級の「岩屑なだれ」を発生しました。
  • 一方,上図(地形)を注視すると,古阿弥陀岳の北側に位置すると思われる「C:阿弥陀岳~B:中岳~A:赤岳~G:横岳~H:硫黄岳~I:赤岩ノ頭~J:峰の松目」に囲まれた,広大な凹地が目に留まります。
  • 凹地の底部や斜面には,下位から古八ヶ岳火山群のキレット安山岩(K),新八ヶ岳火山群の赤岳溶岩(A),阿弥陀岳溶岩(Am)に横岳火山岩類(Yl,Ym,Yu)が積み重なっていることかわかります。
  • 注目すべきは,赤岳溶岩です。 ほぼこの凹地全体に分布しているため,噴火当時地表に露出していた真教寺山溶岩(Sl)の上を覆うようにして流れたのでしょう。 そして,赤岳の活動が終わった後で,横岳火山岩類が噴出してきたのです。
  • 従って,この広大な凹地が形成された年代は,横岳火山(G)の活動を終えてから,溶岩円頂丘の美濃戸中山火山(D)が活動を開始する前まで,ということになります。
  • 巨大凹地の斜面形状は,地すべりの「滑落崖」のような急崖です。 巨大凹地の原因が大規模な山体崩壊ではなかったとしても,小規模~中規模の崩壊が頻繁に起こっていたのでは,と想像します。 凹地の底部には大量の「崖錐堆積物(TI)」が存在しているのは,その証拠なのでしょう。
【現場写真】
八ヶ岳(赤岳)

この登山ルートは,深田久弥の登山ルートの一部を再現しました。
  • 深田久弥は,美濃戸を出て赤岳鉱泉から中岳を経由して赤岳に登頂しましたが,本ページでは,行者小屋を直接経由するルートをトレースしてみました。
  • 地形図上の標高差は1,407mです。 このルートは余り下り坂が無いので,歩行上の登りは約1,470mとなります。
  • 歩行距離は約8.5kmなので,健脚者ならば6時間弱で登頂できるでしょう。 赤岳溶岩が何枚あるか,気に掛けてもらえれば幸いです。
【記事・引用情報と参考情報】

【記事】

  • 新南八ヶ岳火山群は,左図のようにほぼ並行する二列の火山体群から構成されています。
  • 成層火山は,一部を除いて東側の列を構成する一方,溶岩円頂丘は西側の列を構成しています。
  • 新南八ヶ岳火山群の活動は,ほぼ全て南から北に向かって移動し,地形図枠外の北八ヶ岳火山群北端近くの横岳の活動が最後(ただし,現在進行形)です。

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】

  • 本ページは,旧GUPIのウェブサイト「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地質百選」を基にして,事務局が「三次元地形図」,「三次元地質図」や若干の記事などを追加したものです。