土壌侵食(水食)について
土壌侵食とは

 土壌侵食とは,降雨,流水,融雪(氷)の作用や風の作用などによって,表土が侵食されることの総称です。
 本ページでは,以下の区分のように,降雨と流水の作用(水食)に限って記述します。

土壌侵食(水食)
  ┣ 面状侵食(Sheet Erosion): 斜面の表層に薄く流れる「地表流」によって,表層にほぼ均一に発生する侵食現象です。
  ┣ リル侵食(Rill Erosion): 降水量が地表の浸透能力を上回った場合,地表水は流水となって傾斜を下りますが,流水が集まって線状に
  ┃    流れる始めると「洗堀」が起き,その結果,幅の狭い溝(リル)が形成されることがあります。
  ┣ ガリ侵食(Gully Erosion): 雨水による幅の狭い溝(リル)が集約され,流れの勢いが増すと侵食力も増大し,結果的に「谷頭侵食」
  ┃    が始まります。
  ┗ 雨滴侵食による土柱(earth pillar): 「土壌侵食痕」の一種で,地表面に小石(礫),木の根や枝葉などが存在する場合,その下の
     土壌が「雨滴侵食」から守られて,柱状に残っているものを言いますが,通常は柱の高さが2cm以上のものを土柱と言います。


土壌浸食の進行過程(出典: 国際農研 5.農地保全技術マニュアル ―土地の生産力を維持・回復する ―
リルやガリの発達は,樹枝状に拡大する傾向があるため,上流側に向かって面積が広がるのが一般的です。
注 元図の説明はフランス語でしたが,日本語に翻訳しました。
面状侵食とリル侵食の例,その1

現在,この法面は浸食防止用シートに覆われており,観察することはできません。
  • 造成が終わってから約半年後の法面(のりめん)です。 「面状侵食」と「リル侵食」が混在しています。
  • いずれも,「相模層群」に分類される「下末吉ローム層」ではないかと考えています(地質調査未実施)。
  • 粒度分析をしていないので確定的ではありませんが,面状侵食の場所は土粒子が均一なのに対し,リル侵食の場所は土粒子が若干不ぞろいである,という印象です。
  • 斜面の上部で形成された「溝(リル)」の中で地質の変化に伴っていったん消え,再び形成されているものがあります。
  • 溝の幅や深さが大きくなっているケースが散見されますが,これは,流路や流下速度などで小さな「滝」が形成され,下方侵食力(下刻)が増大したからと考えられます。
面状侵食とリル侵食の例,その2
  • 津市付近にのみ分布する,新生代新第三紀漸新世(約460万年前頃)の「磨き砂(阿漕火山灰層)」などの露頭です。
  • 殆ど,直径が0.1mm程度の「火山ガラス片」だけで構成された「火山灰」で,「リル」や「ガリ」の多くは,この地層で発生しています。
  • 画像右側の「沖積錐同等」とは,流水によって運ばれた土壌が扇状地状に堆積していることを表しています。
ガリ侵食の例,その1

関東ローム層の耕作地に発生した「ガリ侵食」の例です。
  • (左)日雨量が50mmを超えた直後の畑です。 ガリの側面はほぼ垂直で,側方侵食は働いていません。
  • (中)日雨量が100mmを超えるとガリの幅が広がると共に,ガリの側面に傾斜がついていました。また,若干ですが,支流(枝谷)も発生しています。
  • (右)日雨量が150mmを超えるとガリの幅が更に拡大し,ガリ側面の傾斜が緩くなると共に,樹枝状の支流も多数存在しています。
  • なお,日雨量とガリの面積について一見相関がありそうですが,ガリ発生時の観察と理由などの考察を行っていないため,単なる傾向と考えています。
ガリ侵食の例,その2

「ガリ侵食(雨裂)」について,「A」のように始まったばかりから,「D」のように大きな谷になったまでの各事例を集めました。
 A :横浜市内の相模層群の「泥岩(更新世)」で始まったガリ侵食の例です。
   高さ2mほどの急崖(切土)にできていました。 写真の上端付近が遷急点です。上の地表に降った雨水が,ここに集まって来たのでしょう。
 B :鹿児島県内のほぼ垂直のシラスの崖にできた「ガリ」です。 谷幅が0.5mと狭いのですが,高さ4m程の垂直の峡谷ができていました。
 C :同じく同県内のシラスの「ガリ」です。 幅1m弱の谷口には,雨水に削られたシラスが扇状地のように堆積していました。
 D :鹿児島県内のシラスの「ガリ」が巨大化した様子です。 側方侵食の一形態である「リル侵食」も随所に発生しています。

土柱の例
  • 「土柱」と言えば「阿波の土柱」が有名ですが,定義上では高さ2cmあれば,立派な土柱とのことです。
  • 従って,普段登っている低山や,自宅の周囲にもあるかもしれません。
  • 右側の画像は,近鉄「西ノ京駅」から「唐招提寺」に向かう道沿いで見つけました。 松の根が,侵食から守っているようです。
「土壌侵食」に関する主な参考文献・資料・ウェブサイト