2000年6月 鹿屋市 特殊地下壕陥没
鹿屋市・笠之原地区の三次元地形イメージ

鹿児島県鹿屋市と東串良町に広がる「笠之原台地」は,鹿児島県で有数の「シラス台地」です。
「姶良カルデラ」から噴出した「入戸(いと)火砕流」がわずかに固結した「シラス」が,厚いところでは数十mにも堆積しています。
陥没した特殊地下壕

写真出典:(財)土木技術センター,笠之原道路災害検討委員会 報告書,平成13年(2001年)2月
2000年6月3日に発生した特殊地下壕の陥没状況です。 地質は「シラス」で,現在は埋め戻し済みです。
① 2000年6月3日,鹿児島県鹿屋市地区笠之原地区の県道工事現場です。
 第二次大戦中に,シラス層を掘削して構築した特殊地下壕(防空壕)が陥没し,大雨の際に道路を通過中だった軽トラックが陥没孔にのみこまれ,
 運転していた女性が死亡しました。
② この事故では,遺族が民事訴訟を起こしました。
 裁判においては様々な紆余曲折がありましたが,2008年に出された地裁の判決では,「陥没事故の責任は鹿児島県にある」,と
 「防空壕(特殊地下壕)を放置した責任は国にある」との判断が示され,後日判決が確定しました。
注 この間の経緯については,藤井(2008)を参照してください。
特殊地下壕に関する参考情報

(左)2000年当時の防空壕入り口(坑口)例。    (中)同じく,防空壕の内部例。    (右)立ち入り禁止目的で,土嚢で仮閉塞したの例。

(左)粗粒シラスを掘削して構築した地下壕の天井(天端)が,円筒状に崩落しています。 茶色の部分は,地下水が浸透している証拠です。
(右)細流シラスを掘削して構築した地下壕では,天端から壁に掛けて,厚さ10cm程度の「剥離崩落」が発生しています。
いずれも,地下壕が崩壊する方向に変化していると,考えられます。

(左)「笠之原台地」の工事現場に出現した地下壕(陥没事故の壕とは異なります)。
(右)シラス層を掘削して構築した地下壕です。 地上に向けて掘削された「斜坑」に対し,
戦後に土砂を投入して閉塞したのですが,坑内で確認すると完全には埋まっていないことがわかった,という事例です。
引用情報・参考情報
・藤井 紀之:鹿児島県鹿屋の防空壕陥没事故と土木工事との関連,地質ニュース650号,pp.26-35.,2008年10月
・地形と地質の解説 > 特殊地下壕とその崩壊について(その1), (その2)(その3)(その4)