過剰殺戮説

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overkill doctrine/overkill hypothesis

解説

  • 第四紀更新世末に世界各地で大型哺乳類が大量に死滅した原因として有力なのが大別して主に人類活動に原因を求める説と気候変動説である。 前者が、アメリカのアリゾナ大学のポール・マーティンらが主唱する「過剰殺戮説」(電撃Blitzkrieg説とも言う)で、高度な狩猟技術を持った現生人類が住みついた土地で大型動物を狩りつくしてしまったと考える。例えば、およそ1万3000年前にパレオ・インディアン(プロト・モンゴロイド)が北米に進出すると、その後2000年ほどの間に、70%近くもの大型哺乳類が消滅したという。 しかし、例えば北米で絶滅した32種の大型哺乳類のうち、人類に狩られていた形跡があるものはわずか(マンモス、バイソン、ウマ、キャメロップス(ラクダ)など)であり、逆に集中的に狩猟対象にされてきたバイソンやシカなどは、今日まで生き残っている。 これらより容易に仕留められたはずの小型動物は、ことごとく存続しているというのも疑問である。 さらにこの説の難点は、ヨーロッパとオーストラリアでは4万年前頃には現生人類が定住していたのに、その後1万5千年前頃までメガファウナ絶滅が起こらなかったという事実である。
  • 他の説としてオーウェン=スミスによる「キーストーン・草食獣説」がある。 それによると、ゾウは木を倒し、驚くべきスピードで樹葉を消費するので、低木の過剰繁殖を防ぎ、生息地の植生の多様さを保つという。 更新世において同じ役割を担っていたマンモスが(過剰殺戮と気候変動のいずれが原因であるにせよ)絶滅すると、たちまち生態系の多様性が失われ、その他の動物も大打撃を被ったと考える。 しかし、スチュアートらの近年の発見(2004)によって、ウーリーマンモスとアイリッシュエルクはシベリアで完新世に入ってからもしばらく存続していたことが示されており(どちらも7700年前頃まで生き延び、ウランゲリ島ではその後もウーリーマンモスが4000年ほど前まで生息していたという)、やはりどれか一つの説だけですべてを説明するのは、難しいというのが実状のようである。
  • 『After the Dinosaurs: The age of Mammals』の著者であるドナルド・プロセロは、絶滅は人類活動と気候変動、さらに地域によって異なる生態上の要素が重なり合って引き起こされたと見るのが、最も妥当だろうと述べている。 さらに、2007年5月に、北米における絶滅と更新世末の寒冷化(ヤンガードライアス・イべント)は、隕石の衝突によって引き起こされたとする新学説も発表されている。

引用文献