第四紀

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Quaternary period

解説

地質年代に関する国際的な取組(したがって日本でもこれに準拠する)は、国際地質学連合(IUGS:International Union of Geological Sciences)の国際層序委員会(ICS:International Commission on Stratigraphy)が行っている。 2009年6月に承認された最新の地質系統・地質年代表(ISC: International Stratigraphy Chart)で、従来と大きく異なるのは後述するような新第三紀―第四紀境界に関する部分である。 それに触れる前に、年代数値の意味を正しく把握しておく必要がある。

  1. 新生代新第三紀Neogeneから第四紀更新世Holocene (天文年代に基づいた値):20世紀初頭にユーゴスラビアの地球物理学者ミランコビッチMilankovitch、M.は、ミランコビッチ サイクル(地球の気候変化は北緯65度における日射量の変化と対応し、それは地球公転軌道の離心率、地軸の傾きや歳差運動の変動周期の組み合わせに起因する)を提唱した。一方、1970年代以降、海洋堆積物中の底生有孔虫殻などの酸素同位体比から推定された過去の海水温度変化などが良い対応を示すことが明らかとなってきた。これらを利用して地質年代境界の年代値を決めたもので、誤差のつかないモデル年代である。
  2. 新生代古第三紀Paleogeneから古生代カンブリア紀Cambrian(放射年代データに基づいた値):可能な限り国際標準模式層断面及び拠点等において各層序境界の直近上下から採取された試料の放射年代値(注:以前は「絶対年代値」とも言ったが、現在では用いない)を内挿して推定する。各層序の地質年代は示準化石によって定義されるが、化石自体の放射年代値は測定しがたいので、このように推定する。したがって現在では誤差が併記されることが多い。
  3. 先カンブリア紀 Precambrian(年代数値自体が各地質境界を定義している):末期を除くと大型化石が産出しないから示準化石による定義はできず、岩相対比も不確実なので国際標準層序年代(GSSA: Global Standard Stratigraphic Age)による数値年代で定義する。したがって、年代数値に誤差は生じない。このように時代によって異なる推定方法による年代値を使い分けざるを得なかった事情は、例えば兼岡(2011)を参照されたい。

さて、土木実務に際して、もっとも大きな影響を及ぼす年代値に関する知見が新第三紀―第四紀境界に関わるものである。IUGS執行委員会は2009年6月30日付けで、以下のように新しい第四紀の定義を公式に批准した.

1) the base of the Pleistocene Series/Epoch be lowered such that the Pleistocene includes the Gelasian Stage/Age and its base is defined by the Monte San Nicola GSSP、 which also defines the base of the Gelasian;:(2) the base of the Quaternary System/Period、 and thus the Neogene-Quaternary boundary、be formally defined by the Monte San Nicola GSSP and thus be coincident with the bases of the Pleistocene and Gelasian、 and 3) with these definitions、 the Gelasian Stage/Age be transferred from the Pliocene Series/Epoch to the Pleistocene.

これにより、正式の紀/系である第四紀は、従来新第三紀鮮新世に区分されていた Gela 期 /階(Gelasian)を含むこととなった。 したがって 鮮新世-更新世境界も Gelasian基底まで引き下げられ、前期更新世には従来のCalabrianとGelasian が含まれることとなった。 Gelasian基底は、ガウス/松山地磁気境界の約1m上位に位置し、年代は2.588 Maとされ、これが第四紀の始まりの(モデル)年代となった。すなわち、 2.7~2.8 Maに始まる世界的な寒冷化が恒常的となった時代で、かつ古地磁気により明確に指示される層準が基底として定義されたわけである(従来は200万年前とか170~180万年前とか言われてきた)。 ちなみに、「第三紀Tertiary」は、死語となっており用いない(もともと第三紀という「紀」の下の区分として「古第三紀」「新第三紀」という「紀」があることは形式論理上おかしかった)。 したがって古い地質図・文献の「第三紀」「第四紀」は読み替える必要があることに留意されたい。(1) 第四紀:地質時代の年代区分の一つで、「更新世Pleistocene」「完新世Holocene」に二分される。前者は、人類の出現した時期で、約 258万8000年前から約 1万1700年前の期間にあたり、全地球的な氷河時代に相当する。氷期・間氷期を数回繰り返し、古気候・海水準変動やそれらによる生物群の変遷・活火山活動などの著しい特徴がある。1万年ほど前に最後(最新)の氷河期が終わり、後者(約 1万1700年前以降現在。したがって「後氷期」ともいわれた)となった。「更新世」は、「洪積世Diluvium」とも称された。 この名称は地質学に時期区分が導入された17世紀に、この時代の地層がノアの洪水に起因して生成されたと信じられ(オオサンショウウオの化石がノアの洪水で溺死した人間の化石だともされた)、同様に「沖積世Alluvium」はノアの洪水以降の生成と考えられたことによる。 現在では非科学的な神話に依拠させる命名は望ましくないため、この区分名は使われなくなった。 しかし、氷河期には海岸線が後退し山と海の高度差が大きくなるので、川の下刻が激しく山麓で洪水になり、扇状地や河岸段丘を形成して急激に土砂を堆積させることになる。これを「洪積」と称する向きもある。 逆に、氷河期以降は海岸線が前進し(日本では縄文海進)山と海の標高差が余りなくの川の下刻が緩くなり、細粒の土砂が運ばれ、三角州や沖積平野を形成し、これを「沖積」ともいう。 すなわち、純粋な地質時代区分ではないが、地形の形成発達史とからめてこの名称を併用する向きもある。 いずれにしても、時代名と紛らわしいので、地質学分野では向後も用いるべきではない。 更新世は、前期、中期、後期に細分され、以下のように年代値の範囲が決められている。 この場合には以下のように英語表記の語頭は大文字とする(注:Pleistoceneは形容詞だが、慣用的に定冠詞やepochを付けずに名詞扱いする場合があるので注意)。後期更新世Late Pleistocene epoch: 0.126 - 0.0117 Mya、12万6000年前? (西暦2000年から数えて) 1万1700年前。現在、タランティアン (Tarantian) の名称がIUGS-ICSで検討されている。 中期更新世Middle Pleistocene epoch: 0.781 - 0.126 Mya、78万1000年前?12万6000年前。 現在、イオニアン (Ionian) の名称がIUGS-ICSで検討されている。 前期更新世Early Pleistocene epoch: 2.588 - 0.781 Mya、258万8000年前~78万1000年前 ・カラブリアン (1.806 - 0.781 Mya、180万6000?78万1000年前) ・ジェラシアン (2.588 - 1.806 Mya、258万8000?180万6000年前) なお、漠然と(厳密な年代が不明な場合)更新世の前半、後半と表記する場合は(英語表記は語頭を小文字)、「更新世前期early Pleistocene」「更新世後期late Pleistocene」とする。したがって、例えば、前期更新世であることは確実だが、さらにその後半をおおまかに略細分する場合は、「前期更新世後期late Early Pleistocene」となる。中生代以前の細区分は、定義が異なる場合(前・中後期と分轄する場合と前・後期と区分する場合がある)が割愛する。必要に応じて、詳細はICS のHPを参照されたい。また、IUGS 機関誌:Episodes 31巻2号(2008)に第四紀問題全般が詳しく解説されているので参照されたい。 念のため、いうまでもないことだが、上記の地質年代区分としての「更新世Pleistocene epoch」と年代層序区分としての「更新統Pleistocene series」は意味が異なり、後者は更新世(に堆積した)の地層の意味で、下部(lower)、中部(middle)、上部(upper)と細分される。したがって、「前期更新統」「下部更新世」などの表記は誤りである。

引用文献