活火山

提供: Geo Wiki(よくわかり面白いGUPI地学用語解説集)
移動: 案内検索

active volcano

解説

休火山dormant volcano・死火山extinct volcano

明治時代において横山又二郎(1896)の『地質學教科書』では、「火山は、皆絶えず其の噴出溝よりガス、灰、燒岩等を吐出するものに非ずして、各破裂の間には全く鎮滅してその噴出溝も凝結せる燒岩に雍塞せられ毫も活動の徴を呈せざるものあり.而て時にこの鎮滅期の久しき有史時代に至り、未だ一回も破裂せず火口の如きも往々水を湛え、湖水に変せしもの少なからず.斯る状態を呈するものを消火山Extinct volcano(注:死火山) 又は睡眠火山Dormant volcano(注:休火山)と云う.…之に反し、噴火口内よりガス水蒸気等を発するか、又はこれに熔岩を湛え多少の活動の兆を呈するものを活火山Active volcanoと云う.」とあり、定性的な噴火活動度の違いにより形式的ではあるが「死火山・休火山」と「活火山」を区別している.

大正時代初期において、例えば横山(1913)の 『陸文學講話』では、「火山には間断なく多少の活動を示すものと、時々活動するのみで、その間は多少鎮静して居るものとがある.而も此の鎮静時期が時に甚だ長く、記録の始まって以来、現に今日まで引き続いておるものもある.因って、古来火山を二種に区別して、有史期にいたって活動したことのないものを休眠火山(一名死火山または消滅火山)と云ひ、活動したことのあるものを活動火山と云って居るが、この区別法の非学術的であることは、国によって時期にはなはだしい長短があるのみならず、又休眠火山と思はれたものも突然活動を開始することがあるによって知ることが出来る.」と説明しており、すでに「活火山」とそれ以外を区別することの非科学性を指摘している.また、井原(1914)の『地學講話地熱の作用』では,「死火山」を歴史時代以前に活動したが有史時代には活動していないものと説明する一方で,噴火口もほとんど閉塞し,水を湛えて火口湖や火口原湖をなしているとも説明している.大正時代中期においても,例えば横山(1919)『地質學攬要』で「火山の中には,全く消滅して,人類の記憶の遡る限り,活動の痕跡だも示さなかつたものがある.之を消火山(注:死火山)と稱へて,現に活動して居る活火山と區別することになつてゐる.しかし此の區別は學術上全く價値のないといふのは消火山と認められた山でも俄然活動を再開することがあるからである.」と述べ,イタリヤの「ベスビウス山」を最好例としてあげている.

そもそも「有史時代」(歴史時代)という時代区分は,一般的には文字が成立し,それによる文献資料で歴史事象(本論では火山噴火や地震などの自然事象を含む)を検証することが可能な時代を指し,我が国ではばくぜんと2,000?3,000年以内程度を指すと考えられている(それ以前は「先史時代」).しかし文字文化の進展の度合いが国・地域によりまちまちであるため,世界統一の暦年代や絶対年代で示される学術用語とはいえない.わが国でも多くの議論があり,確定していないがおおよそ3世紀中ごろからの「古墳時代」を日本の「先史時代」と「有史時代(歴史時代)」の境をなすとみなすのが一般的である.この意味でも「活火山」の厳密な定義は困難であり,暫定的・便宜的なものにならざるを得ないのは明らかである.

昭和時代初期においても,例えば佐藤傳藏(1928)の『地質學提要』では「火山は現在の活動状態によって,活火山・休火山及び死火山の三つに区別される.しかし此の区別は,全く便宜上のもので,その間には決して明らかな境のあるものではない.活火山は現在活動中のもので,那須山・浅間山・阿蘇山がその例である.休火山は歴史上又は口碑にその活動の事実が残されているもので,富士山・八ヶ岳などは其の例である.死火山はその活動は口碑にも伝わらず歴史にも載っていないが,地質学上火山であることは明らかなもので,大和國の二上山・下野國の男体山・上野國の妙義山などは其の例である.」とし,「死火山」「休火山」「活火山」の区別を継承しつつも,それは全く便宜上のものであることを再度指摘している.また,木下ほか(1943)の『英和和英 鑛物辭典』では,「活火山」を「現在噴煙し,或は熔岩を噴出しつゝある火山」と極めて限定的に定義している.

いずれにしても常に噴気活動があったり頻繁に噴火する火山を「活火山」,噴火記録はあるが現在は活動していない火山を「休火山」,有史以降の噴火記録のない火山を「死火山」としていた.しかし,噴火や噴気活動の間隔は火山によってまちまちであることなどから,「活火山」と「休火山」を分けることは難しく,科学的な論拠足りえないことから,気象庁は昭和40年代から噴火記録のある火山や活発な噴気活動がある火山をすべて「活火山」とした.例えば,昭和43年(1968)に発行された気象庁職員のための火山観測マニュアルである『火山観測指針』では,従来「休火山」とされていた富士山を「活火山」リストに掲載した.そういった中で,一般的に「死火山」と考えられていた北海道の雌阿寒岳が昭和30年(1955)に,本州の御嶽山が昭和43年(1968)から活発な噴気活動を始め,さらに後者は昭和54年(1979)に水蒸気爆発を起こしたことから,改めて「死火山」の分類区分も科学的論拠に乏しいことが一般的にも認知されるようになった.また,「休火山」とされていた秋田駒ヶ岳が昭和45年(1970)に,九州の雲仙岳が平成2年(1990)から噴火し,噴火記録の有無は当然のことながら歴史時代に人が目撃し記録したかどうかに依拠するので,同様に厳密な科学的論拠たりえないことが改めて認識された.そこで平成3年(1991)に,活火山の定義を「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」に変更し,噴火記録の有無ではなく地質学的な証拠に基づくものと明確化した.ところがさらにその後,2000年以上の休止期間をおいて噴火する火山もあることが明らかとなり,国際的には1万年以内(すなわちほぼ第四紀完新世に相当)に噴火した火山を「活火山」とするのが主流となってきた.火山噴火予知連絡会は平成15年(2003)に「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を「活火山」と再定義し,気象庁もその定義を踏襲することになった.この結果,日本の「活火山」数は計110となったが,今後も火山研究の進展により「活火山」数は増減する可能性があることは自明である.さらに,上記「完新世」の定義はその前の「更新世」の最終氷期が終わり,温暖化が始まった約1万年前から現在までを意味するが,その定義は気候変動に基づく物理化学的パラメータに基づいており,第四紀後期の火山活動史やその背景となったテクトニクスと直接関連しているわけではないことにも留意しておくべきである.また,「活火山」の範疇にある火山が,次にいつ噴火活動を発生させるかはさらに別の問題である.さて,火山噴火予知連絡会は,社会的影響度を評価することなく火山学的に評価された火山活動度により,ランクAランク・Bランク・Cランク(Aが活動度が高い)の新しい3区分の「活火山」の活動度分類(ランク分け)を決めている.このランク分けは社会的影響度を考慮しないものであるため,当然のことながら火山活動による一般社会への危険性の評価には直接結び付かない.そこで気象庁は,平成19年(2007年)12月1日から,火山活動による災害の危険性に応じ,国内すべての「活火山」について噴火警報・噴火予報を発表するようになった.同時に活動度の高い火山には5段階の噴火警戒レベルを導入し,噴火警報・予報で発表することとした.ただし噴火警戒レベルと,上記の活動度分類(ランク分け)は,直接関連するものではないことは再度留意すべきである(加藤,2014)。長野県岐阜県境に位置する御嶽山が2014年9月27日に噴火(水蒸気爆発)したが、噴火直前までの警戒レベルは平常とされる1であり、登山客はほぼ無警戒の状態で登山し被災した。12時36分、気象庁地震火山部により御嶽山の噴火が発表された後に噴火警戒レベルは3に引き上げられ、入山規制がなされた。


引用文献

加藤碵一(2014)「地質事象における「活」の諸問題 」応用地質技術年報,33,39-58.