活構造

提供: Geo Wiki(よくわかり面白いGUPI地学用語解説集)
移動: 案内検索


解説

“active fault”という用語は、アメリカにおいてカリフォルニア州の「断層図」編纂の中で、とくに地震を起こす断層として提示されたのが始まりといわれる(Willis、1923).すなわち震災対策上の用語・概念としての側面が強かった.わが国では、昭和時代初期に多田(1927)によって「極めて近き時代迄地殻運動を繰り返した断層であり、今後も尚活動す可き可能性の大いなる断層を活断層と云ふ」と定義されたことを嚆矢とする.この定義は、基本的には現在でも変わっておらず、例えばNeuendorf 他(2005)のGolssary of Geologyでも“Active fault” “A fault on which slip has occurred recently and is likely to occur in the future. Active faults are the locus of contemporary elastic strain accumulation、 seismicity、 or fault creep”である.すでに指摘したように(加藤、1989)、この前半部は「活断層」の認定基準であり、後半が狭義の定義に相当するが、それぞれ以下に述べるように多くの問題点があり、斯界の一致をみていない.またさらに、大塚(1948)は、前述した火山区分とまったく同様に「活断層」「休断層」「癒着断層(死断層)」の区分を提唱したが、この区分の妥当性も当然ながら現在では極めてあいまいで疑わしいものであり、以後使うべきではない.さて、「極めて近き時代」や“recently”とは、いつのことであろうか.当時は地質時代の最新期である新生代第四紀を指すとされてきた.約46億年の地球史に比べればおよそ200万年前(あるいは180~170万前)以降の時代区分である第四紀は、まさに地史的には「極めて近き時代」といいえた.しかるにIUGS(国際地質科学連合)執行委員会は2009年6月30日付けで、新しい第四紀の定義を公式に批准し、約259万年前が今後は第四紀の始まりの年代となった。したがって少なくとも現在では、第四紀に活動した履歴のある断層を単純に「活断層」とみなすことはなくなった。事実第四紀初期に活動し、その後活動していない断層(「第四紀断層」と呼ぶべきか?)も存在する.第四紀後期に定向的累積変位を持って複数回活動した断層を対象に再検討すべきであろう.それでは、第四紀後期の中で具体的に何万年前あるいは何十万年前以降と狭義に規定しうるものであろうか.従来から多くの案が提唱されているが、これらのほとんどは活断層の認定が断層の変位基準となる地形(例えば、海成段丘面)の形成年代に深く関わることから設定された便宜的なものであって、その曖昧さが指摘されている(中田、2008).ともあれ、1998年の「原子力安全委員会安全審査指針集」(改訂9版)では、A級活断層では.1万年、B、C級活断層では5万年までさかのぼっても活動がないものは活断層の対象としないことになっていた.2006年の指針改定で8~13万年前(後期更新世)までさかのぼることとなった.通常よく用いられてきた12~13万年前以降の活動履歴とは、最終間氷期の高温・多雨気候下で生じた広域的な海進(いわゆる「下末吉海進」)に関連して形成され、日本列島沿岸域で広く発達し、それゆえ地形的に容易に認識しうる地形面(海岸段丘面)である「下末吉面」に変位を与え、変動地形として残っているか否かに依拠している.すなわち、後期更新世の変位を基準としている.最新の国際合意では、後期更新世は12万6000年前~1万1700年前の期間である.別の定義によれば、「現在の応力場の下で地震を起こし得る断層のうちで、断層面が地表まで達しているもの(地表断層)に限る.ただし、伏在断層であっても断層面の上端が地表近く(およそ1km以下の深度)まで達しているものは、何らかの方法で最近の地質時代における活動を確認することができる.したがって、この種の浅部伏在断層は活断層の範疇に含める.」とされる(池田、1996).「現在の応力場」とは、日本列島周辺の4つのプレート(太平洋プレート・フィリピン海プレート・北アメリカプレート・ユーラシアプレート)の運動方向や運動速度が有意に変化せず、したがってそれらによって惹起される日本列島および周辺海域の広域的造構応力場も大きく変化せず定常的である時代の応力場を意味する.この期間においては、活断層の活動は、定向的で累積的変位を伴って繰り返されると想定しうるからである.しかし、海域の浅部伏在断層は、物理探査を主に判定せざるをえず、その活動史が陸上の活断層ほど十分に吟味しがたい.2013年7月の原子力規制委委員会による「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド」(案)では、「後期更新世(約12~13万年前)の地形面又は地層が欠如する等、後期更新世以降の活動性が明確に判断できない場合には、中期更新世以降(約40万年前以降)まで遡って地形・地質構造及び応力場等を総合的に検討した上で活動性を評価すること」としている.中期更新世は、78万1000年前~12万6000年前とされるから約40万年前以降というのは中期更新世後期を意味することとなるが、その数値の地質学的意味は十分説明されていない.徳山(2013)は「地質的には、わが国では40万年前の地層といっても、その分布はきわめて限られており、40万年前に陸上で何が起こったかを振り返るのは不可能に近く、この規定は地質学的には非現実的であると言わざるを得ない.評価の期間をいたずらに長くすることが安全につながるわけではないのである.」「中期更新世までさかのぼる」とする補完規定は日本の地質にとっては非現実的な規定なので削除すべきである.」と述べている.「40万年前以降」とするのは検討されるべき1つの試案ではあるが、現状においては学問的な吟味や合意はまったく不十分であり、短絡的に例えば原子力発電所立地・再稼働問題に関する活断層評価に適用するのは、現時点では恣意的かつ拙速にすぎるといえよう(加藤、2014)。 活断層調査法については、例えば杉山(2001)を参照されたい。

引用文献

  1. 加藤 碵一(1989)『地震と活断層の科学』朝倉書店,280p.
  2. 加藤 碵一(2014)「地質事象における「活」の諸問題」応用地質技術年報,33,39-58.
  3. 中田 高(2008)「活断層研究の将来について」 活断層研究,28,23-29.
  4. Neuendorf,K.K.E. , Mehl,J.P.Jr. and Jackson,J.A.(2005) “Glossary of Geology,Fifth ed.” Am.Geol.Inst.779p.
  5. 杉山雄一(2001)「5 活断層調査法」『地質学ハンドブック』(加藤 碵一・脇田 浩二総編集.2001)朝倉書店,330‐402.
  6. 徳山 明(2013)「原発と活断層の評価」エネルギーフォーラム,6,114-117.
  7. Willis.B.(1923) A fault map of California, Seis.Soc.Amer.Bull.,13,1-12.