2025年1月 八潮市内の道路陥没(中川流域下水道中央幹線)
陥没事故の概要

八潮市の公開図面(画像データ)の一部を切り取り,事務局が若干の文字と矢印を加筆しました。
  • 2025年1月28日午前9時50分頃,八潮市中央一丁目の県道松戸・草加線の交差点で道路の陥没が発生し,偶然通りかかったトラックが転落する事故が発生しました。
  • 八潮市の資料によると,この場所には「中川流域下水道中央幹線」が通っており,更に「一号幹線」と「三号幹線」が合流するという,極めて重要な場所であることがわかりました。
  • この合流部分が何らかの原因で破壊され,道路陥没に繋がったもの,との説が有力です。
  • また,古地形図を参照すると,八潮市役所から現場に通じる道路にはかつて「(農業用)水路」が存在し,現在は暗渠となっていることがわかっています。
地形と地質の三次元イメージ : 八潮市道路陥没現場周辺
三次元標高段彩図上で マウスクリックすると 「治水地形分類図・更新版(出典,下記)」 を表示します。ダブルクリックで元に戻ります。
  • 「赤矢印」の場所が,道路陥没の概略位置です。
  • 標高段彩図の左側(西側)は,標高が4m前後の土地が広がっています。
    国土地理院の「治水地形分類図・更新版」によると,この場所は「自然堤防」由来の「微高地」に分類されています。
  • 陥没箇所付近は,標高3m弱の「古利根川(現中川)」由来の「氾濫平野」です。
  • 陥没箇所の下流側には,標高2m弱の「後背湿地」が広がっています。
陥没地点付近の古地形図
  • 「十字マーク」の箇所が,陥没事故現場を表しています(若干の位置誤差があり得ます)。
  • 「(右図)1965年-1968年の古地形図」には,現場を通る「(農業)用水路」が描かれています。
  • 「(左図)1896年-1909年の古地形図」にも描かれているので,かなり古くから使用されている用水であることがわかります。
  • 報道写真から,この用水路は道路舗装直下の「暗渠」となっていましたが,事故当時は使用されていなかった,との情報がありました。
陥没地点付近の想定地層断面図(独自作成)
  • 埼玉県からは,公共事業で実施された数多くのボーリング柱状図が一般に公開されています。
  • 今回,陥没現場付近を調べたところ,下水道・中央幹線沿い本のボーリング柱状図が存在することがわかったため,それらを入手して,「想定・地層断面図」を作成してみました。

本図を作成するツール(ウェブページ)は,どなたでもご自由に利用できます。 下記,参考情報にアクセスしてください。
  • 地層断面図から,当該地の地層は概ね「3層」に区分できます。
  • 第Ⅰ層 : 地表から数メートルの間に分布する「砂が優勢な地盤」です。
      標準貫入試験の結果から,支持力がほとんど期待できない「非常に緩い砂」に該当します。
  • 第Ⅱ層 : 地層は「シルト~砂質シルト」ですが,標準貫入試験の結果を参照すると「非常に軟らかいシルト~砂質シルト」に区分されます。
      標高のやや高い西側の場所では,深度10m~12mで「第Ⅲ層(細砂層)」が出現しています。
      一方,東側の「中川(古利根川)」に近い場所では,深度が40mに至るまでこのシルト層が続いていて,第Ⅲ層は未確認です。
  • 第Ⅲ層 : 西側の2本のボーリングでのみ出現する「砂層」です。 出現深度は約10mなので,下水道管の敷設深度と同じくらいです。
      標準貫入試験の結果から,「緩い~中位の~締まった砂」に該当します。
  • 以上の結果から,「中川流域下水道中央幹線」は「第Ⅱ層:非常に軟らかいシルト層」の中に敷設されていると想像できます(断定には工事記録が必要です)。
引用情報・参考情報など

【引用情報】

【参考情報】

  • 本ページで使用している「地層断面図」は,本ウェブで公開している「ボーリング柱状図関連処理ウェブサイト」の「複数のボーリング簡易柱状図を地形断面図上に作図する処理」を使用しました。
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