自然災害の記憶:八木地区を中心とした
      広島土石流災害に関する地質情報及び関連の情報
災害発生場所の三次元地形イメージと地形図

事務局で判読した土石流範囲 + 国土地理院5mDEM + 地理院タイル を Kashmir3D で処理しました。
お断り: 土石流の範囲は正確ではない場合があります。
 また,地図は2種類を合成しており,合成時のひずみが残っています。 ご理解の上,ご利用ください。
土石流の特徴

☆「渓流A」は,今回で最も規模が大きくかつ被害の大きかった土石流を発生させました。
 阿武山の南西斜面の標高430m付近で発生し,その流下距離は水平距離でおよそ1.4km,流下した比高(標高差)は約420mにも及んでいます。 

☆八木四丁目の「渓流B」は,危険区域と公表された土石流扇状地の上部に留まりましたが,流下距離は約0.7km,比高は約270mでした。

☆崩壊発生地点における渓流の河床傾斜は「渓流B」の方が急ですが,土石流の規模は「渓流A」の方が遙かに大規模でした。
 原因としては,「源頭部の表層崩壊の規模が大きかった」,「渓流に堆積していた土砂の量が多かった」などが考えられます。

降水量・土壌雨量指数について

※最大時間雨量を示した時刻と土石流が発生するまでの時間差は殆どありません。
※土壌雨量指数が200mmを越えてから,土石流が発生するまでの時間差も殆どありません。
注 当時,広島市安佐南区の警報発表レベルは「116」でした。

・連続雨量:256mm(8/19~8/20)

・最大時間雨量:101mm
      (8/20 03:00~04:00)

・最大土壌雨量:236(8/20 04:00)

・土石流発生時刻: 8/20 03:30前後

・今回の土砂災害(土石流)では,「最大時間雨量を示した時刻と土石流が発生するまでの時間差」と「土壌雨量指数が200を越えてから土石流が発生するまでの時間差」のいずれもが,殆ど無かったことが判明しています。

・これは,浅い土層が滑落する「表層崩壊」が引き金になって「土石流」が発生したもので。
 このタイプの土石流は,日本全国の山地のどこでも発生する可能性があります。

・注 この時間差の殆ど無い土砂災害の例としては,「2009年7月に山口県防府市で発生した土石流災害」が挙げられます。
  同災害では,特別養護老人ホームに流れ込んだ土石流で7名が犠牲になるなど,合計14名が亡くなっています。


半月以上前からの雨量の状況です。 連続雨量と違って,雨量ゼロによるリセットをしていないので「累積雨量」としました。
土石流扇状地(沖積錐)と思われる地形について

☆「土石流について」で解説したように,表層崩壊や深層崩壊がトリガーとなって発生した土石流のうち,礫などの粒径の大きい成分は,
 渓谷の出口付近で沖積錐(扇状地の傾斜な急な部分=土石流扇状地)として堆積します。
 この土石流扇状地は,しばしば同心円状の等高線を持つことで知られています。

☆上記の特徴を持つ地形を,安佐南区の八木地区で調べてみると,左図のように見つかりました。
 最も形状が鮮明なのは,緑井八丁目の渓流です。
 この扇状地には,河川が複数本存在しており,恐らく地質時代の新生代に土石流が発生していたことを示唆しています(詳しくは現地調査必要)。

☆今回最も規模が大きく,被害も大きい土石流が発生した渓流の土石流扇状地は,それほど大きくはありません。
 過去の活動は余り活発では無かった可能性が考えられます。

☆実際にどの程度の土石流堆積物が過去に堆積していたかを知るためには,ボーリング調査などが必要となります。

参考情報,お断り

・京都大学防災研究所 > 地盤災害研究部門 > 2014年広島豪雨災害時の斜面崩壊・土石流について(速報その2: 降雨と崩壊の分布)
・地形と地質の解説 > 土石流について

【お断り】
 旧版に掲載していました電子地図は,「電子地図による検索ページ」の拡充により,廃止しました。ご了解ください。