岩盤が包み込む本堂 類型:神仏
  伊勢山上(いせさんじょう) 三重県松阪市
奇岩の写真

飯福田山(いぶたやま)頂上付近からの伊勢山上

本堂手前で撮影
いわれ,特徴,エピソード等

 自然の巨岩の一部が剥落し,その剥落部分に飯福田寺(いぶたじ)の本堂である岩屋本堂を建てています。

 この行場一帯を総称して伊勢山上と呼んでいます。
 自然の業と人間の業が融合した妙景です。

 寺伝によれば,大宝元年(701年),修験道の伝説的開祖である役行者による開山とされています。
 山岳仏教・修験道の山寺の典型的な伝承をもちます。

 単に露岩の上に寺院の本堂を建てただけではなく,庇のように岩盤が左・右・上の三方を包み込んでいるのが特徴です。
 いわゆる磐座・磐境と呼ばれるものの多くは平面的な聖域表示にとどまる場合が多いですが,ここは本堂の周囲一帯を平面的+垂直的=空間的に聖域表示する自然の磐境として高い価値をもつと言えます。

 奇岩の規模も百景に挙げるにふさわしいほど巨大で,また,奇岩全体を眺望できる地点が複数あり視覚的な環境も恵まれています。
 今も全山が「生きた修行場」として機能しているので,単なる過去の歴史の遺跡や観光地としてだけではなく,人によって「奇岩を通して見るもの」が違うという意味でも大切にしていきたい場所です。。

 三重県が指定する名勝に選定されています。

地形・地質の概要

 伊勢山上がある飯福田山は,岩屋本堂以外にも山中各所に大小の露岩が見られる岩山地形です。

 それも単なる露岩のままではなく,自然崩落により特徴的な形状をもつ奇岩の宝庫となっています。

 現在も行場の順路に沿いながら,数々の名前が付いた奇岩の様子を目にすることができます。

 飯福田山周辺の地質は,新第三紀中新世(約1,600万年前頃)の「海成層,砂岩」です。
 周囲には,中生代後期白亜紀(約9,000万年前頃)の「花崗閃緑岩」が広く分布している中に,入江のように新しい砂岩層が入り込んでいる場所です(詳しくは,地質図を参照ください)

奇岩近傍の三次元地形イメージ

 標高300m~800mという,低高度の山々が多数分布する,準平原遺物のような地形を呈しています。
 その中で,「伊勢山上(行者岩)」は,尾根の先端から突き出るように姿を現しています。
  「差別侵食」と言って良いので,この岩塊はかなりち密で硬度のある岩石であったと思われます。
周辺のジオサイトや観光地

☆観光地
 飯福田寺:ご本尊は『薬師如来』。
 同じ奇岩のカテゴリーでは,松阪市飯高町「道の駅 飯高駅」近くの礫石(つぶていし)が有名です。
 松阪市岩内町には妙法山瑞巌寺があり,本尊は自然の石を石観音としてまつり,近くの山中には男石・女石などの奇岩もあります。

交通概況

☆鉄道
 近畿日本鉄道山田線,またはJR紀勢線「松阪駅」下車。三重交通バスで,1日に3往復の「柚原」行きに乗車し,「柚原口」で下車します。徒歩約30分です。

☆自動車
 伊勢自動車道「一志嬉野IC」を経由し,県道67号,県道30号と県道45号で飯福田寺まで走行してください。「松阪IC」からも行けます。

記事,引用情報,お断り

【記事】
 奇岩の形状から,「タフォニ」現象による風化が発生しています。 詳しくは⇒⇒⇒をどうぞ。

【引用情報】
 国土地理院 >
   地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)
   国土地理院利用規約

【お断り】
 奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。
 地形図については,地図検索のページをご覧ください。