人が住むという伝承の 類型:自然
  鳴り岩(なりいわ) 新潟県糸魚川市
謂われ,特徴,エピソード等

 岩がヒュルヒュルと奇妙な音をたてたことから鳴り岩と呼ばれています。
 この岩は,小滝川ヒスイ峡に向かう道路脇の杉林の奥にあります。
 岩の表面には,直径10~数10cmの円~楕円形の穴が数多く空いています。
 昔は,岩の前には植林された杉林がなく,強い風が直接岩に当たっていました。

 昔は,鳴り岩の前を,山奥の田んぼにいく小道が通っていました。
 朝,山奥へ農作業に出かける前に,茶椀を穴の中に置いて拝んでおくと,帰りには,朝に願った飲み物が茶碗に入っていたそうです。
 地元の人々は,音を出す鳴り岩には人が住んでいて,茶碗に飲み物を出すのだと思い,「鳴り岩の婆」と呼んでいました。しかし,実際にその姿を見た者はいなかったそうです。

 鳴り岩は,糸魚川ジオパークの見学地になっており,地元の人々が設置した案内板があります。

地形・地質の概要

 産総研・地質調査総合センター発行の「1/20万シームレス地質図」では,古生代ペルム紀の「混在岩」で「付加体」であると記されています。

 砂岩に生じたタフォニが存在します。
 強風時に,タフォニのために渦状の気流が発生し,奇妙な音が鳴ったと考えられます。

鳴り岩の全景

鳴り岩の近景
奇岩近傍の三次元地形イメージ

「鳴り岩」は,「清水山(東峰,606m)」から北東に延びる尾根を,標高350m辺りまで下ったところの「小滝川」側の急斜面にあります。
周辺のジオサイトや観光地
糸魚川ユネスコ世界ジオパーク
 この奇岩は,糸魚川ジオパークを構成する「9.小滝川ヒスイ峡 - ヒスイに関係の深いジオサイト」に近接した場所にあります。
 糸魚川ジオパークのエリア内には,この他に「とっとこ岩」,「青海川のヒスイ」,「越後八十八ヶ所」と「奴奈川姫の産所」が奇岩に選定されています。
 近隣のジオサイトには,「明星山」,「小滝川ヒスイ峡(小滝川硬玉産地)」,「高浪の池」や「ヒスイ峡フィッシングパーク」などがあります。
☆観光地
 大岩壁,小滝鉱山跡地,土倉沢の化石産地,など
☆観光コースの例
  鳴り岩 → 小滝川ヒスイ峡 → 高波の池
交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道: 北陸新幹線「糸魚川駅」下車。タクシーを利用してください。
  • 自動車: 北陸自動車道を「糸魚川IC」を経由し,国道148号を「小滝」まで走行し,県道483号を「小滝川ヒスイ峡」まで走行して駐車してください。
         鳴り岩までは徒歩約1kmです。
記事,引用情報,お断りなど
 

【記事】
 ☆タフォニ
  岩盤の表面に開口した円形~楕円形の穴のことです。
  岩盤の表面から水分が蒸発すると,水に溶けていた石こうなどの塩類が結晶することがあります。
  その結晶が成長する過程で周囲の岩盤に影響を与え,結果的に岩盤の表面が破壊を受けます。
  これを塩類風化と言いますが,砂漠などの乾燥地域,海水の飛沫を受けやすい海岸の岩盤によく見られます。
  砂岩や凝灰岩の急崖に発生しやすく,最終的にはオーバーハングを形成しますが,このオーバーハングは岩盤崩壊や落石を起こしやすい地形です。
  日本の奇岩百景の中では,「般若のお船岩」,「伊勢山上」,「高池の虫食い岩」と「獅子吼岬」もタフォニとされています。

【引用情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

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