秩父の山奥で出会う巨大な船 類型:歴史
  般若のお船岩(はんにゃのおふねいわ) 埼玉県小鹿野町
奇岩の写真

秩父札所32番 法性寺から眺めたお船岩

お船岩の遠景
いわれ,特徴,エピソード等

 秩父の山奥で巨大な船に出会ったような驚きに遭遇できます。
 秩父札所三十四ヶ所観音霊場のひとつ32番法性寺は「お船観音」と呼ばれて親しまれています。
 また,埼玉県自然環境保全地域に指定され小鹿野町の指定史跡にもなっています。

 お船岩は,寺の裏山にあり巨大な岩石でできていて船のへさきのような形をしています。

 寺は奈良時代の行基菩薩が開祖と伝えられ, 鎌倉時代の文献記録があります。
 御本尊観世音菩薩は,室町時代中期の作で「お船観音」と言い,宝冠の上に笠をかぶって船をこいでいる珍しい像です。

 霊験記によれば,娘が池で悪魚に襲われ水難にあったとき,この寺の本尊の化身が母の姿となって 現われ危難を救ったとされています。

 お船岩への登り道は岩の間をくぐって登ります。
 沖縄の世界遺産・斎場御獄(せーふぁうたき)に似ていると評判です。
 「花の寺」とも言われ,春から秋にかけて椿・つつじ・山百合・女郎花・撫子などが咲き誇り,秩父の花浄土となっています。
 秋海棠は「東国花の寺百ヶ寺」に指定されています。
 お釈迦様の誕生日を祝う灌仏会には,地元の子どもたちによって昔ながらの「花祭り」が行われます。

 寺には,長享二(1488)年の秩父札所番付(埼玉県指定文化財)が所蔵されています。
 秩父札所は,33ヵ寺であったものが江戸時代に江戸からの参拝者の増加に伴い,34ヵ寺(西国・坂東と合わせて百観音)とし,江戸から巡礼しやすい現在の順序に変えました。
 寺の古文書は,それ以前の番付を示した記録です。

地形・地質の概要

 秩父盆地の新第三紀中新世(約1500万年前)に堆積した細粒砂岩やシルト岩からできています。
 お船岩は,地層が南東に傾斜,北西側が切り立ったケスタ地形の頂部にあり,ここは秩父盆地が見渡せる絶景ポイントです。

 途中に宝永四(1707)年建立,総欅材の三間四方舞台造りの観音堂の裏に蜂の巣のような穴がたくさん見られます。
 これは,砂岩などの岩石中の塩類を含む水が表面にしみだし,水が蒸発すると塩類の結晶が成長し,岩石の表面を崩して出来た,タフォニの一種と考えられます。 

奇岩近傍の三次元地形イメージ

 奇岩の場所は,「秩父盆地」のやや南西部に位置しいています。この付近は標高が600m~700mで,比較的緩傾斜の山々が連なっています。
 その中で,本奇岩は尾根上に突き出た大きな岩塊となっており,周囲に比して極めて硬かったための「差別侵食」と思われます。
周辺のジオサイトや観光地

ジオパーク秩父
 この奇岩は,ジオパーク秩父のジオサイトである「小鹿野町法性寺のお船岩」を構成するジオポイントです。
 ジオパーク秩父の主なジオサイトは,日本の地質百選「秩父・ようばけ」,「おがの化石館」,宮沢賢治の歌碑 や 海底地すべり跡(スランプ褶曲)などがあります。

☆観光地
 札所31番観音院では,秩父の石仏や石塔・石臼等の材料となった「岩殿沢石」と呼ばれた凝灰質砂岩が見られます。
 境内には十万八千体の磨崖仏があります。

交通概況

☆鉄道
秩父鉄道の「秩父駅」あるいは,西武鉄道「西武秩父駅」で下車。 西武観光バス「小鹿野車庫・栗尾行」に乗車し,「松井田」で下車。 徒歩約4km。 また,同バスで「小鹿野町役場」で下車し,小鹿野町営バス「駒木野ゆき」に乗り換え,「札所32番」で下車。 バス停はお寺の前です。

☆自動車
関越自動車道「花園IC」より,皆野寄居有料道路を経て約30分です。

引用情報,お断り

【引用情報】
 国土地理院 >
   地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)
   国土地理院利用規約

【お断り】
 奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。
 地形図については,地図検索のページをご覧ください。