日本三大陰陽石の一つ 類型:人間
  陰陽石(いんようせき) 宮崎県小林市
謂われ,特徴,エピソード等

 霧島ジオパークのジオサイトの一つ「陰陽石」は「夫婦岩」とも呼ばれ,「火砕流堆積物」が川水で削られてできたという,自然の妙技ともいうべき奇石です。
 美女に見惚れた竜が天から降りてきたという伝説もあり,「竜岩」とも呼ばれています。

 高さ17.5mの男石(陽石)と,周囲5.5mの女石(陰石)がワンセットとなっており,陰と陽が一つの岩からできているのは世界的に珍しいと言われています。

 古くから縁結び,よろず生産の神または子宝・安産の神として信仰され,毎年秋分の日に陰陽石祭りが催されています。

 明治の詩人野口雨情もここを訪れ,「浜の瀬川にゃ二つの奇石 人にゃ言うなよ 語るなよ」という歌を残しています。

地形・地質の概要

 この奇岩は,小林市を貫流する「浜の背川」の上流部に存在します。

 新生代第四紀チバニアン期(約34万年前),「加久藤カルデラ」を発生させる巨大な噴火が起きると同時に大量の「火砕流」が発生して,この奇岩のある地域にも堆積しました。

 その後長い年月を経て,この地の火砕流堆積物が浜の背川の川水により侵食を受け,現在の形が形成されたのです。

周辺の観光地やジオサイト

☆ジオサイト
 霧島ジオパーク: 宮崎県と鹿児島県にまたがっている霧島ジオパークは,30km × 20kmの範囲の中に分布する20余の火山群である霧島山を中心とした地域です。 主なジオサイトは,加久藤カルデラとその南縁に噴出した霧島連山です。
 三之宮峡:加久藤火砕流堆積物を浜の背川が侵食してできた,全長約4kmの峡谷です。 遊歩道が整備されているので,散策の途中で櫓の轟(とどろ),びょうぶ岩,カッパ洞や千畳岩といった日本の奇岩百景プラスを見ることができます。 陰陽石はこの三之宮峡の入口近くにあります。
 須木の滝(ままこ滝):加久藤火砕流堆積物を本庄川(綾南川)が侵食してできた滝です。 かつては落差が約41mありましたが,綾南ダムによる小野湖の完成により,現在では半分程度になったそうです。

☆観光地
 生駒高原:夷守岳(ひなもりだけ)の北斜面中腹,標高450m~500mに広がる高原で,コスモス,ポピーやアメリカフヨウなどが咲き乱れることで有名です。 高原内には「北きりしまコスモドーム」という,天体望遠鏡やプラネタリウムを備えた施設があります。
 霧島温泉郷:霧島連山の南側に分布する温泉群で,主なものは硫黄谷温泉,栄之尾温泉,丸尾温泉,湯之谷温泉などです。

記事

日本三大陰陽石(加藤碵一:2015):岩手県千厩(花崗岩),岐阜県中津川(花崗岩)と本奇岩(火砕岩:火砕流堆積物)。
火砕流堆積物:数μm程度の微粒子(火山灰)から,数10cmの火山礫あるいは数m程度の岩塊で構成されています。
 それらが噴出口から高速で流れ下って堆積・固化した岩石なので,粒子は不揃いです。
 記憶に新しいのは,1991年6月3日に発生した雲仙普賢岳の火砕流です。


陰陽石の近景。上のしめ縄が男石,下のしめ縄が女石

陰陽石の遠景
奇岩近傍の三次元地形イメージ

奇岩「陰陽石」の付近は,約34万年前頃と推定されている「加久藤カルデラ」の生成時に噴出された「大規模火砕流堆積物(溶結凝灰岩など)」と,
約3万年前頃と推定されている「姶良カルデラ」の生成時に噴出された「大規模火砕流堆積物(入戸火砕流:しらす:非溶結~弱溶結)」が混在しています。
標高が高く余り開析されていない場所の多くは後者で,標高が低く川が発達しているような場所の多くは前者です(例外あり)。
交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道:JR九州吉都線小林駅で下車します。小林市コミュニティバス(宮崎交通)の①小林-上九瀬線に乗車し,約15分の陰陽石で下車します。
       平・土日は1日に5往復ありますが,日・祝日は3往復となります。 事前に確認してください 。
  • 自動車:宮崎自動車道を小林ICで降り,県道1号と国道221号を経由して,小林市本町1丁目で左折して国道265号に入り,小林市東方まで進んでください。
       「陰陽石0.4km,三之宮峡2km」という道路案内板があります。
引用情報,参考情報,お断りなど

【引用情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約

【参考情報】
 ・産総研・地質調査総合センター発行 > 20万分の1 シームレス地質図

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

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