岩鞍に守られたお堂一つ 類型:神仏
  地蔵倉(じぞうぐら) 山形県大蔵村
奇岩の写真

肘折伝説と縁結びの地,地蔵倉全景

地蔵倉の近景
地蔵倉からの肘折カルデラ。右端は高倉山(1064m)
いわれ,特徴,エピソード等

 「地蔵倉」は,肘折温泉開湯縁起にまつわる地として,地元の人々に大切にされています。
 伝承によれば,肘折温泉は大同2年(807年)に,豊後国の出身の行者・源翁によって発見されたと言われています。

 出羽三山への道を探していた源翁は,迷い込んだ肘折の山中で地蔵倉に住む,地蔵の化身である老僧に遭遇しました。 地蔵は「岩山から落ちて肘が折れても,ここの湯に浸かるとたちどころに直る」と肘折温泉の存在を源翁に教えるとともに,「湯殿山参拝の後,この地に留まってこの地を守るように」と言って,湯殿山へ至る道へと導いたのだといいます。
 源翁は,地蔵の言葉に従って地蔵倉に住みつき,これが肘折温泉の 興りとされています。

 現在では,凝灰岩の断崖の岩陰に六地蔵の石仏が安置され,近くに木造の本殿があります。
 毎年7月14日に湯の神様に感謝し,長い間温泉を守って来た先人たちの偉業をたたえる「開湯祭」が執り行われます。

 岩壁には無数の孔があり,念じながら紙を紙縒りにして入れ,穴に通すことが出来たら,願い事が叶うという言い伝えがあります。

 縁結び,子宝祈願,商売繁盛のパワースポットとして多くの方々が訪れます。

地形・地質の概要

 地蔵倉の絶壁は「肘折カルデラ」の「カルデラ壁」です。 絶壁沿いの通路を歩くと,その高さと景色の良さに驚くでしょう。

 岩壁を良く見ると縞が入っていることがわかります。 これは1度の噴火ではなく,いくつかの噴火が繰り返したのかもしれません。 縞と縞は密接しているので短期間のうちに噴火が繰り返された可能性があります。

 堆積物内には大きな礫が含まれていることから,マグマ分が少ないボソボソした噴出物の中に基盤岩を含む降下堆積物(凝灰集塊岩)だと考えられます。

奇岩近傍の三次元地形イメージ

 「地蔵盛山」の西側斜面が「断崖絶壁」となっているのは,直径2km~3kmあると言われている「肘折カルデラ」のカルデラ壁だからです。
 カルデラの中心は,「肘折温泉」から「苦水川」を数百メートル遡ったあたりです。
 なお,苦水川が合流した後の「銅山川」は,カルデラ壁を完全に破壊し,更に「大規模火砕流」の台地を劇的に侵食して流れ下っています。
周辺のジオサイトや観光地

☆観光地
 肘折温泉:直径約2kmの肘折カルデラの東端にある温泉ですが,同じカルデラ内の黄金温泉とカルデラ外の石抱温泉と共に,肘折温泉群とも呼ばれています。 日本有数の豪雪地帯としても有名です。
 四ケ村棚田:四ケ村(しかむら)とは,豊牧,滝の沢,沼の台と平林の4集落の総称で,日本の棚田百選に認定された棚田があります。 毎年夏になると「ほたる火コンサート」が開催されています。
 湯の台高原:肘折温泉のすぐ北に接する高原です。 火砕流堆積物(しらす)で構成されています。 毎年9月には,白い「そばの花」で覆われます。 また近くには,湯の台スキー場があります。

交通概況

☆鉄道
 JR山形新幹線の新庄駅で下車します。大蔵村村営バスの肘折温泉行きに乗車し,約60分の終点で下車してください。 温泉街の南東部にある肘折温泉湯坐神社(薬師神社)が登山口です。 徒歩で約30分で本奇岩に到着します。

☆自動車
 尾花沢新庄道路(国道13号)を新庄ICで,国道47号に降ります。 酒田方面に走行し,新庄市升形で左折して国道458に入ります。肘折温泉まで進み,後は公共機関の項を参照してください。

引用情報,お断り

【引用情報】
 国土地理院 >
   地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)
   国土地理院利用規約

【お断り】
 奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。
 地形図については,地図検索のページをご覧ください。