ノルウェー:アルタの岩絵遺跡(野外)博物館
地質などの特徴

・岩絵遺跡,氷河遺跡

露頭写真:アルタの岩絵遺跡
投稿者による写真の説明や記事など

【投稿者:府川 宗雄氏】     2006年

 この岩絵博物館は,ノルウェー北極圏の小都市アルタの中心部から南西に5kmほど離れた,アルタ湾(Aita fjorden)最湾奥の小湾(通称Jiepmaluokta=Seal bay)東岸沿いに位置している。
 現地に暮らした中~新石器時代の人びとが,岩盤に線刻した絵が数多く残されており,世界遺産にも登録されていると同時 に,野外博物館としても公開されている。

 同時代は,丁度狩猟採集時代から漁労時代を経て,農牧時代へと遷移する時期に当たっているため,館域内に露出する主として砂質スレートからなるオルドビス系露頭の上部から下部にかけて,人びとの生活の移り変ってきたようすが,時代を追って記録されている。。

 当時の人びとが,現在我々が知るような歴史認識を持っていたわけではなく,このような記録の歴史的な配置は,同地方における後氷期のアイソスタシーに伴う地盤隆起の結果という偶然の産物に過ぎないわけであるが,人類史を地史的に読み解く上では貴重な記録といえる。

 さらに,岩絵のキャンバスともいえる岩盤上には,写真に観るような大小無数の擦痕までが残されており,当時のこの地域における氷河の動態まで読み取ることができる,まさに生きた教科書的な博物館である。

 アルタからさらに北方約200kmにある,ノルウェー(もちろんヨーロッパ)最北端(とされている)Nordkap (本当の欧州最北端はさらにこれよりも東に位置する Nordkyn島の最北端にある)まで,真夜中の太陽を見に行く途中で,アルタから同行した現地ガイド・エンゲルさん(写真中央)の紹介で立ち寄ったのだが,本当に貴重なものを見せてもらったと感謝している。

 なお,蛇足ではあるが,アルタから北岬までの沿道も,さながら氷河遺跡の博物館そのものである。

事務局による参考情報など

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