長野県:千曲川の断崖岩壁(攻撃斜面),岩鼻の岩壁と洞窟
地形・地質の特徴

断崖,蛇行,攻撃斜面,側方侵食,ひん岩,捕獲岩,岩壁,亀裂

【ステレオ現場写真】 岩鼻岩壁と洞窟

北陸(長野,当時)新幹線の下り列車が上田駅を出発して1分後,くらいに撮った疑似ステレオ写真です。
ものすごい洞窟とオーバーハングです。 亀裂もきれいなアーチです!。 裸眼で立体視できる人は,応用地形判読士になれる,かも?。
【現場写真】半過岩壁(部分)

「千曲川」の流れが削り出した「仮称・半過岩壁」です。 この当時,崖の部分にはほぼ全て「ロックネット」が設置されていました。
岩壁の下には狭い道路がありますが,現在は通行が禁止となっているようです。
地形と地質の三次元イメージ(産総研・1/20万 シームレス地質図)
‼マウスオーバー‼  地図上にマウスを乗せてください。産総研・地質調査総合センターの「1/5万 地質図幅・坂城(出典,下記)」を表示します。

千曲川は,その水量故,蛇行における「攻撃斜面」は,一般的な斜面ではなく,断崖絶壁になることがあります。
上田盆地(別名上田平)の終端部は「狭窄部」となっており,流れの方向から左岸が「攻撃斜面」となっていました。
その部分に,断崖絶壁とも言い得るほどの侵食崖が存在します。「(仮称)岩鼻岩壁:半過岩鼻とも」と「(仮称)半過岩壁」です。
特徴的なのは,上流側の岩鼻岩壁のど真ん中に,巨大な洞窟が開いていることなのです(➡詳細はここをクリック)。
地形の三次元イメージ : 古千曲川による側方侵食について

「岩鼻岩壁」の上流側には,広大な谷底平野である「上田平」が広がっています。
上田平は,古い時代の「湖成段丘」や千曲川の氾濫原などから構成されていますが,
氾濫原と段丘面の境界が現河川敷から相当程度,南方に離れていることがわかりました。
かつての(古)千曲川が,この境界付近を流れていたため,洪水時において千曲川の濁流は,行く手を塞ぐ「岩鼻岩壁」に激しく衝突したことでしょう。
【記事,引用情報と参考情報】

【記事】

  • 千曲川左岸の氾濫原と段丘面の位置から,かつての(古)千曲川は「岩鼻岩壁」の正面を攻撃するように流れていた,ことが推測されます。
  • ほぼ水平になっている「柱状節理」の正面から千曲川の濁流が押し寄せた結果,最も弱い部分が削られて,奥行き約30mにも及ぶ洞窟ができた,と考えて間違いはなさそうです。

【引用情報】

【露頭写真】 岩鼻岩壁の全容

2004年3月当時の岩鼻岩壁。 2021年頃,岩壁近くに「道の駅」ができました。 洞窟の前面は,当時のままになっているようです。
【露頭写真】 洞窟と岩壁の拡大

(左)高さが50m弱もある大洞窟。 洪水時の濁流による侵食によるものだとは,にわかに信じがたいのですが,真実のようです。
(右)岩壁の右側には,巨大なオーバーハングが存在しています。 白色の岩石は,「捕獲岩=ゼノリス」といって,全く別の岩石です。

亀裂①と亀裂②によって,岩壁から浮いているブロック(浮石)が存在します。 角度によって見える/見えない,があるので注意が必要です。
情報によると,この浮石はその後落下したので,現在は存在しないとのことです。 危険な岩壁なのです。
【記事とお断り】

【記事】

  • 北陸新幹線が上田の駅を通過した直後,左方の千曲川越しに「岩鼻岩壁」が見えて来ます。新幹線はまもなくトンネルに入るので,見えている時間は10秒程でしょうか。千曲川流域には,ほぼ垂直に切り立った急崖が所々に存在しますが,このような大洞窟が存在するのは,ここの岩鼻だけのようです。
  • 洞窟周辺の基盤は,中期中新世の堆積物である別所層・青木層です。 岩鼻の急崖部は,この基盤に地下深部から貫入して来た「ひん岩」でできています。 ひん岩は,中性の半深成岩で,主に斜長石や角閃石に粗粒斑晶を多く含んでいて,性質は極めて硬質です。
  • 硬い岩盤をほぼ垂直に断ち切り,更に洞窟をくり抜いたのは,千曲川の水流による侵食力,とわかり水の力の強大さを改めて知りました。
  • 岩壁の所々に,φ5cm~φ1.5m程度のゼノリス(捕獲岩)が存在しています。

【お断り】

  • 本ページは,「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地質案内」の当該ページを,最新の知見に基づきバージョンアップしました。