静岡県:静岡・焼津間の大崩海岸[日本坂の難所を貫くトンネル群]
 (日本の地質百選:大崩海岸)
地質の特徴

・海食崖,枕状溶岩

地形の三次元イメージ : 大崩海岸
‼マウスオーバー‼  地図上にマウスを乗せてください。産総研・地質調査総合センターの「1/20万 シームレス地質図(出典,下記)」を表示します。

「安倍川」が作った扇状地と,「大井川」が作った広大な「三角州」の間に,高さが約450mで幅3km超の山塊が,壁のように横たわっています。
その山塊の南東側は駿河湾に突き出ていて,高いところでは200m弱の「海食崖」となっています。 その崖を「大崩海岸」と言います。
【空撮写真】 大崩海岸及び周辺部

東海道新幹線,東海道本線,東名高速道路および国道150号のいずれもが,この「大崩海岸」を避けて,トンネルで通過しています。
なお,国道1号は,当該地域を大きく迂回した山間部を通っています。
【空撮写真】 大崩海岸・日本坂
投稿者による写真の説明や記事など

【投稿者:大島 洋志氏】  H18.10.16

静岡・焼津間の大崩海岸・日本坂の難所を貫くトンネル群
 昭和10年代のJR 東海道本線用宗~焼津間は大崩海岸に沿った区間を通っていたが,石部,磯浜の2トンネルに挟まれた海岸沿いの区間が海岸侵食や斜面崩壊にさらされるなど,防災上の問題区間であったため,別線で路線を改良する必要に迫られていた。
 そのため,東京~下関間の弾丸鉄道計画の一環として施工済みであった日本坂トンネル(現東海道新幹線日本坂トンネル/写真①は日本坂トンネルの静岡方坑口)を利用する路線に仮移設(昭和19年10月)された。

 しかし,昭和32年に始まった東海道新幹線プロジェクトの推進に伴い,仮移設のままの使用が許されなくなり,石部トンネルの途中から山側に分岐させ,磯浜トンネルの中間部にドッキングさせるトンネル改良工事に着手し,昭和37年に竣工,現在の東海道本線の姿になった。

 大崩海岸線には海岸沿いに県道が走っているが,斜面崩壊に対処するため,海上に橋梁で逃げている部分もある(写真②)。
 この海上橋の300m以上南の海崖部には,古い石部トンネルの坑口残骸を遠望することができる。
 産業廃棄物で埋め立てられた谷間は,昔の磯浜トンネル坑口に到る東海道線の明かり区間だったところである(写真③)。
 さらに南にある小浜の集落の海岸線には,消波工で守られた砂浜が辛うじて残っている(写真④)。

 東海道五十三次時代の東海道は,大崩海岸の難所を避けて5kmほど内陸側の丸子,宇津ノ谷(峠),岡部を通っていた。
 国道1号線もここを通過しているが, トンネル技術の発達と共に,大崩海岸・日本坂を貫いて短絡するようになり,今では鉄道だけでなく,国道バイパストンネルや東名高速道路のトンネルがこの地 を通過しており,トンネル集中地帯となっている(写真⑤は焼津方から見た眺めである。
 右から東海道本線の石部トンネル(単線並列),東海道新幹線日本坂ト ンネル,国道バイパスの新日本坂,日本坂両トンネル,東名高速道路日本坂Ⅱ期線の3車線断面とⅠ期線の2車線断面2本の3トンネルであり,計8本のトンネルが見えるのである。

 特に東名高速道路の日本坂トンネルⅠ期線は,日本のトンネル建設史上類を見ない毎分180 トンの突発湧水があったトンネルとして,またタンクローリーの追突事故でトンネル火災のあったトンネルとして,有名である。
 写真⑥は異常湧水が見られたトンネルを横断する谷地形である。
 先に施工された新幹線日本坂トンネルでも,この谷地形を横断する部分で大量湧水があったとされるが,高速道路トンネルに対して,先行水抜き効果を発揮するまでには至らなかったようである。

【記事,引用情報と参考情報】

【記事】
 ・参考図書:日本の地形レッドデータブック 第1集 新装版 -危機にある地形-,p.126,古今書院刊,2000年12月8日
 ・高アルカリ玄武岩の断崖絶壁で,現在でも崩壊を繰り返しています。 枕状溶岩も観察されます。 

【参考情報】
 ・静岡大学学術リポジトリ > 大崩海岸地域の地質

【お断り】
 ・本ページは,旧GUPIのウェブサイト「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地質百選:大崩海岸」と「日本の地質案内:大崩海岸」
  を統合したものです。