岩手県:イギリス海岸
地質の特徴

凝灰岩,宮沢賢治

投稿者による露頭写真とその説明:イギリス海岸

【投稿者:岩松 暉氏】

  • 「北上川」とその支流「瀬川」の合流点付近を,宮沢賢治はイギリス海岸と命名しました。
  • 青白色の凝灰質泥岩からなり,バタグルミの化石や植物片の化石を産出します。
    渇水期には賢治が書いたように,広い河原が出現し甌穴なども見られるそうですが,現在では河川改修やダム建設に伴って,ほとんど露出しません。
  • 乾燥すると白っぽく見えるので,ドーバー海峡の白亜(チョーク)になぞらえたと言われていますが,もちろん,地質時代も違いますし,崖の高さも全く比べものになりません。
  • なお,「銀河鉄道の夜」では「プリオシン海岸」とも呼んでいますが,Pliocene(第三紀鮮新世)ではなく,現在では更新世の地層だと言われています。
地形の三次元イメージ:北上川右岸,イギリス海岸付近[事務局作成]

小説の記述などから「イギリス海岸」は「段丘崖」かと想像しましたが,下図のように地質学的には完新世の「河川堆積物」が分布する場所に分類されています。
地形図の比較:1/20万シームレス地質図と1/20万地質図幅『盛岡』[事務局作成]

【疑問に思う点が三つあります】

  • 『1/20万シームレス地質図第2版』及び「1/20万地質図幅『盛岡』」の双方共,「イギリス海岸」そのものは「第四紀完新世の河川堆積物」に分類されています。 いわゆる,現世の河原の扱いです。
    ところが,「大石他(2014)」は,論文の表1で,イギリス海岸付近の地層年代は「150万年~190万年前」と報告しているのです。
    従って,この付近は完新世の河川堆積物ではなく「更新世の堆積岩」となります。
  • シームレス地質図には,イギリス海岸に最も近い西側の「段丘崖」は,鮮新世の「砂岩・泥岩など」であると記載されています。
    一方,1984年発行の1/20万地質図幅『盛岡』では,この段丘崖の地層(Ks層)は,「更新世の金沢層」で「砂岩など」と記載されています。
    シームレス地質図の方が刊行が新しいのでこちらを信じたくなりますが,どちらが正しいのか事務局では判断がつきません。
  • 段丘崖の地層がそのままイギリス海岸付近まで続いているか否か,についての情報を持ち合わせていません。 どなたかの考証に期待します。
【引用情報と参考情報】

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】

  • 本ページは,旧GUPIのウェブサイト「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地質案内」を基にして,事務局が「三次元地形図」,「三次元地質図」や若干の記事などを追加したものです。