新潟県・群馬県:蛇紋岩(接触変成)と非対称山稜の谷川岳
地形の特徴

蛇紋岩,接触変成,非対称山稜,周氷河性平滑斜面,積雪,日本百名山

地形の三次元イメージ : 谷川岳
  • 「トマノ耳」と「オキノ耳」という二つの頂(双耳峰)を持つ谷川岳は,上州側の斜面傾斜は断崖絶壁を思わせるほど急であるのに対し,越後側の斜面は,山襞が殆ど無い平坦で,比較的緩い傾斜である,という見事な対比を見せてくれています。
  • 谷川岳やそれに連なる主尾根,あるいは主尾根から分かれる枝尾根のほぼ全ては,幅が狭く切り立っていて(ナイフリッジ),歩行困難な難所なのです。
  • これらの地形を造りだしたのは,尾根や斜面を構成する岩石よりも,毎年冬になると大量に積もる雪と激しい季節風が造りだした,と言われているのです。
地形と地質の三次元イメージ :
三次元地形図上でマウスクリックすると「1/20万 シームレス地質図(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

1/20万 シームレス地質図 の主な凡例は,ここをクリックしてください。 別ウィンドウで表示します。
  • 「谷川岳」を中心として,天神尾根の途中から一ノ倉岳の少し手前まで,古生代・オルドビス紀(約4.8億年前)~同・シルル紀(約4.2億年前)の「蛇紋岩(超苦鉄質岩類)」が分布しています。
  • 20億年以上と言われている日本最古の岩石(島根県)ほどは古くはありませんが,相当古い岩石に分類されるでしょう。
  • 蛇紋岩は『上部マントルを構成するかんらん岩が,地下水の影響を受けて変質してできた岩石』です。
  • 普通の蛇紋岩は,無数の割れ目(ジョイント)がある上に,軟らかくて脆い性質のため,斜面崩壊や地すべりの起きやすい地質です。
  • しかし,谷川岳付近の蛇紋岩は,山麓に分布する「花崗岩や花崗閃緑岩」による「接触(熱)変成」を受けて,塊状で硬くなっているため,侵食には強くなっているそうです。
  • 谷川岳の主稜の西側(万太郎谷川)は,枝谷と枝尾根の振幅が小さい平坦な斜面を呈している一方,東側(湯檜曽川側)の斜面は細かな凹凸が多いうえに,斜面全体が断崖絶壁ともいえるほどの急傾斜になっています。
    明らかな「非対称山稜」と言えます。
地形と空中写真の三次元イメージ : 谷川岳の非対称山稜
  • 「小松,1999」は,『蛇紋岩地域の特徴は,緩斜面であることと,深い谷は少ないこと」と述べています。
  • これを踏まえて谷川岳付近を眺めてみると,主稜の西側(魚野川,万太郎谷側)の蛇紋岩分布域は,谷の数が少ない平坦な斜面をしています。
    ただ,谷川岳付近の蛇紋岩は接触変成を受けて,性質がかなり変化しているハズなので,この説がそのまま適用されるかどうかまではわかりません。
    「周氷河性平滑斜面」である可能性が高いからです。
  • 主稜の東側(湯檜曽川側)の斜面は「断崖絶壁」である上に,小さな谷が数多くあり,更に,一ノ倉尾根のような支尾根は全て「ナイフリッジ」であるなど,小松(1999)の述べている蛇紋岩の特徴は持っていません。
【地形断面図】 谷川岳の非対称山稜
  • 上図は,「万太郎谷:風上側」~「一ノ倉沢:風下側」の地形断面図です。
  • 主稜付近に限定すると,万太郎谷の平均傾斜は約31゜で,一ノ倉沢のそれは約50゜となり,風下側が急傾斜であるという,です。
  • 左図は,非対称山稜の代表格である「白馬岳」と比較した地形断面図です。
  • 白馬岳は,風上側は周氷河作用による,風下側が氷食・雪食作用による非対称山稜の典型的な特徴を示していますが,谷川岳の特徴はより顕著であると言えるでしょう。
谷川岳

この登山ルートは,深田久弥の登山ルートとは若干異なります。
  • 深田久弥は,「天神峠」を経由して谷川岳頂に至った,とのことです。
  • しかし,現在は天神平までロープウェイが設置されており,通年運航されているところから,「天神平」から「一ノ倉岳」までをトレースしました。
  • 標高差は約660mですが,途中のアップダウンを累積すると約910mの登りとなり,歩行距離は約4.8kmでしょう。 健脚者ならば約3時間程度でしょうか。
【記事・引用情報と参考情報】

【記事】

  • 山稜の西側斜面(周氷河作用): 氷期から現在まで,冬季に吹き付ける西風により,西側の斜面では雪が吹き飛ばされて積もりません。
    岩盤中の水が凍結・膨張することで岩屑化し,風の力も借りて移動するので,斜面は傾斜があるものの凸凹は平均化され「周氷河性平滑斜面」となります。
  • 山稜の東側斜面(氷食・雪食): 季節風の吹き溜まりとなって積雪が多くなります。
    過去の氷期においては,雪が凍ってできた氷河(状)の氷が下方に移動することによる氷食と運搬によって,斜面は急傾斜化しました。
    現在は,積雪のために凍結融解による周氷河作用は起きにくい代わりに,(雪田の)融雪水による侵食のほか,雪崩による侵食も考えられます。

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】