富山県:剱岳の氷河地形(三ノ窓氷河,小窓氷河,池ノ谷氷河)
地形の特徴

氷河地形,氷河,圏谷,カール,日本百名山

地形と地質の三次元イメージ :
三次元地形図上でマウスクリックすると「5万分の1 地質図幅『立山』(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

5万分の1 地質図幅『立山』 の主な凡例は,ここをクリックしてください。 別ウィンドウで表示します。
  • 剱岳(2999m)の山頂から前剱から剱御前へと続く主稜は,中生代・ジュラ紀,船津花崗岩類に属する「石英閃緑岩・閃緑岩(D)」で,その周囲は同年代の「毛勝山花崗岩(Gkc)」が広く分布しています。 解説書によると,この石英閃緑岩は,毛勝山花崗岩の上位層ではなく,「捕獲岩」とのことです。
  • どちらもマグマが地中深くで,ゆっくりと冷えて固まった深成岩です。
      閃緑岩は,中性で,花崗岩よりは細粒の長石や黒色斜長石などから構成されています。
      花崗岩は,酸性で,石英や長石,黒雲母などから構成されています。
  • 前期のように主稜を構成しているのは閃緑岩なので,周囲の花崗岩よりも風化や侵食には強いのかもしれません。
  • 「剱岳」に複数存在する「雪渓」の流動性を確認するための調査結果によると,「小窓雪渓」,「三ノ窓雪渓」と「池ノ谷雪渓の」3雪渓で「流動性が確認された」ことから,これらは日本雪氷学会より「氷河」と認定された,とのことです(飯田,2013,2020)。
地形と地質の三次元イメージ : 東側斜面の氷河地形(三ノ窓氷河,小窓氷河)
  • 「剱岳」の東斜面(谷)で,雪渓の移動性が確認されたのは「小窓雪渓(I)」と「三ノ窓雪渓(G)」の2箇所です。
  • 何れの氷河も,「源次郎尾根」という巨大な尾根の北側にあります。 尾根による日照時間の短さが,谷底の積雪量の多さに繋がっているかもしれません。
  • 「飯田,2013」によると,小窓氷河(I)は,標高2,000m(赤点,以下同)から同2,300mの間に存在し,三ノ窓氷河(G)は同1,700mから2,400mの間に存在しています。
  • 小窓氷河(I)が存在する谷は,一見するとV字谷なのですが,下記の地形断面から,「U字谷:圏谷=カール」の特徴を持っていることがわかります。
  • 三ノ窓氷河(G)の谷幅は,小窓氷河(I)のそれと比較すると幅が狭くなっています。 下流まで氷河が存在することと,谷幅の狭さは関係がありそうです。
【地形断面図】 小窓氷河,三ノ窓氷河

資料を基にして,「氷河」と想定される場所の「地形断面図」を作成しました。
いずれの谷も,「U字谷(カール=圏谷)」の特徴が顕れています。
【現場写真】

撮影場所の関係で,源次郎尾根の向こう側は写っていません。 夏季の雪渓をイメージしてみてください。
地形の三次元イメージ : 西側斜面の氷河地形(池ノ谷氷河)
  • 「池ノ谷氷河(右俣)」は,日本に現存する7箇所の「氷河」の中で,唯一,季節風の風上側(北西側)にあるとされる氷河です。 しかし,
  • 下右の写真のように,「早月尾根」という,剣山で最も巨大な尾根の北側に位置しているので,季節風の風下側になって積雪量は多いと考えられます。
  • 更に,早月尾根のために,右股の谷底の日照時間は短くなるでしょうから,氷河が形成される条件が揃ったと想像します。
  • 「飯田,2020」によると,池ノ谷氷河は標高2,300m~1,800mの間に分布しています。
【地形断面図・現場写真】池ノ谷氷河

(左)左岸が急斜面なのは「攻撃斜面」だからでしょう。 右岸は「U字谷(カール=圏谷)」の特徴があります。
剱岳

この登山ルートは,現在の一般ルートを示しており,深田久弥の登山ルートとは異なります。
  • 深田久弥が実際に登頂に利用したルートはわかっていません。 このため,立山の室堂を登山口とするルートをトレースしてみました。
  • 登山口(室堂駅)の標高は2,433mで,剱岳山頂の標高は2,999mなので,標高差は566mしかありませんが,途中,称名川や剣沢などの下りがあるので,結局約1,300mの登りとなります。
  • 歩行距離も約7.8kmあるので,健脚者でも8時間弱は必要となるでしょう。 途中の山小屋で1泊か2泊すると,雷鳥を撮る時間も生まれるでしょう。
【記事・引用情報と参考情報】

【記事】

  • 現存する日本の氷河は,以下の7箇所です(飯田,2020)。
    三ノ窓氷河 (剱岳), 小窓氷河 (剱岳), 池ノ谷氷河 (剱岳),御前沢氷河(立山),内蔵助谷氷河(立山),カクネ里氷河 (鹿島槍ヶ岳),唐松沢氷河 (唐松岳)
  • 山稜の西側斜面(周氷河作用): 氷期から現在まで,冬季に吹き付ける西風により,西側の斜面では雪が吹き飛ばされて積もりません。
    岩盤中の水が凍結・膨張することで岩屑化し,風の力も借りて移動するので,斜面は傾斜があるものの,凸凹は平均化されます。
  • 山稜の東側斜面(氷食・雪食): 季節風の吹き溜まりとなって積雪が多くなります。
    過去の氷期においては,雪が凍ってできた氷河(状)の氷が下方に移動することによる氷食と運搬によって,斜面は急傾斜化しました。
    現在は,積雪のために凍結融解による周氷河作用は起きにくい代わりに,(雪田の)融雪水による侵食のほか,雪崩による侵食も考えられます。
  • アバランチ・シュート:「雪崩路」とも言う樋状の凹地形です。雪崩路の岩肌は,雪崩によってやすりをかけられたような「鏡面」状になります。
    ただし,雪崩は30~50ºの傾斜面でよく発生しますが,どの斜面でも発生するわけではありません

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】