鹿児島県:吐噶喇列島
      [宝島,小宝島,悪石島,平島,諏訪之瀬島,中之島,口之島,横当島,上ノ根島,臥蛇島,小臥蛇島]
地形の特徴

・活火山,火山地形,噴火口,溶岩流,隆起波食棚

案内用三次元イメージ:吐噶喇列島

「吐噶喇列島(とから)」は,全て「鹿児島県十島村」に属しています。図中,「臥蛇島」と「小臥蛇島」を除く7島が有人島です。
「宝島」から「口之島」まで約130kmあって,その全て航路(フェリー)という,日本で最も不便な地域と言ってもよいでしょう。
十島村役場は鹿児島市に設置されています。運行は週に2便で,鹿児島~口之島間が6時間,口之島~宝島間が6時間20分です。
地形の三次元イメージ・空中写真:宝島

「宝島」は,新生代新第三紀中新世後期(約1100万年前頃)に活動した火山島です。
その後,第四紀更新世になると「小宝島」共々隆起したため,島には数段の海成段丘面(海岸段丘面)と,
「琉球石灰岩」と呼ばれている隆起サンゴ礁(隆起波食棚)が存在します。
「宝島」と「小宝島」は吐噶喇列島に属していますが,隆起サンゴ礁が存在するために,地質的には「琉球列島」の最北端に分類されています。

「宝島」の北東部には,島の面積に対しては広大と思われる「砂丘(植生あり)」が広がっています。
「大池」は,段丘と砂丘の間の低地に水が溜ったものと思いますが,確証はありません。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。
地形の三次元イメージ・空中写真:小宝島

「小宝島」も,宝島と同時期に活動した火山島です。長い年月で浸食が進み,火山体は海上に頭だけを出していますが,
その後の隆起運動により「琉球石灰岩」と呼ばれる「隆起サンゴ礁」が,頭の周りを取り巻き,まるで麦わら帽子のようにも見えます。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。
地形の三次元イメージ・空中写真:悪石島

「悪石島」は第四紀後期更新世(約10万年以降)に活動した,「複式火山」による新しい火山島です。
悪石島火山には,外側が「ビロウ山」,内側が「中岳」という二重の外輪山があります。

中央火口丘は「御岳」です。最高点の「溶岩円頂丘」と,若干高度を下げたところには「火口」が残っています。
放牧場のある台地は,比較的粘性の高い「大峰溶岩」によるものですが,不思議な形をしているものです。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。丁度,正面が海食による断崖絶壁です。御岳山頂の白い点はTV放送局です。
地形の三次元イメージ・空中写真:平島

平家の落人伝説の残る「平島」は,吐噶喇列島ではやや古い火山島です。
新生代第四紀中期更新世(約10万年より以前頃)に活動し,現在は停止したと考えられています。
波による侵食により火山地形はほぼ無くなってしまいましたが,近くの島には無い「隆起波食棚」が,島の大半を取り巻いています。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。島が隆起した証拠(隆起波蝕棚)が写っています。
地形の三次元イメージ・空中写真:諏訪之瀬島

「諏訪之瀬島火山」は,現在活動中の「活火山」です。安山岩質溶岩と火砕岩を噴出する「成層火山」に分類されます。
島で最も古い火山は,約1500万年前の「富立岳(とんだちだけ)火山」です。
その後,7万年ほど前の古期御岳火山,6万年ほど前の中期御岳火山の活動を経て,
5万年ほど前から新規御岳火山の活動が活発化し,現在に至っています。

御岳火口付近から作地海岸まで,大規模な「文化岩屑なだれ」が存在しますが,これは1813(文化10)年の「山体崩壊」によるものです。
その後,1884年頃,1980年~84年頃,1989年~1994年頃,2001年~2011年頃に活発な活動が記録されています。
1884(明治17)年の噴火は大規模で,御岳の新火口から「明治溶岩」が流れ出しました。詳しくは「日本の活火山」を参照ください。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。「御岳」の新火口から立ち上る噴煙が写っています。
地形の三次元イメージ・空中写真:中之島

「中之島」には,新生代第四紀中期更新世(約50万年前頃)の古期火山(例,先割岳)と,新生代第四紀完新世(約1万年前以後)の「御岳火山」が存在します。
古期火山はその後活動を停止したため,山体の侵食が進み,火山地形の原形を留めなくなりました。
「セリ崎」近くには「海成段丘」と「波食棚」らしき地形が存在しますが,詳しくはわかりません。
古期火山と新規火山の間が空いているため,中間には「盆地」が形成されました。
川水が流れ込むために,軟弱な地盤や湿地帯となっている場所があります。

「御岳火山」は,均整の取れた「成層火山」です。島の両端に新旧の火山があり,中間が平坦地の八丈島とよく似ています。
火山体が新しいせいか,海食崖の高さが低いように感じられます。
最新では,1914年に小噴火があったという記録がありますが,それ以前についてはなさそうです。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。「ジンニョム岳」など古期火山群は,侵食により火山地形が失われつつあります。
地形の三次元イメージ・空中写真:口之島

「口之島火山」は,複数(10個程度)の「溶岩円頂丘」が集まった「複式火山」です。
最も古い火山は,約52万年前頃の「タナギ山」です。
「横岳」溶岩円頂丘は,南東側が崩壊しカルデラができましたが,その中から「前岳」溶岩円頂丘と火砕岩が噴出しました。
最も新しい火山体は,12~13世紀頃に活動した「燃岳」です。山頂には,小規模の火口が存在します。

「横岳」~「烏帽子岳」は,西に傾いている大きなカルデラです。
「大立神」~「セリイ岬」~「西之浜港」~「烏帽子崎」には,「波蝕棚」がほぼ連続して存在します。
わずかながら「海成段丘」も存在するようなので,島の北部が隆起する傾動運動があるのかもしれません。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。
地形の三次元イメージ・空中写真:横当島・上ノ根島

「横当島火山」は,「火口」を持つ「成層火山」の「東峰火山」と,侵食により多少形の崩れた「西峰火山」から成り立っています。
地質図によると,「上ノ根島火山」を含め全ての火山は,新生代第四紀完新世(約1万年前以後)の活動,とされています。
「東峰火山」にははっきりとした火口が残っているので,最も新しい火山と言えますが,
無人島の上近くの島からも相当離れているので,詳しい活動時期は特定できないでしょう。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。一連の写真で,最初に撮影した画像です。
「宝島」より沖縄に近いのですが,活動時期が新しいためか,サンゴ礁が写っていません。
地形の三次元イメージ・空中写真:臥蛇島・小臥蛇島

「臥蛇島」は,1970年までは有人島でしたが,その年に全島民が移住し現在は「無人島」となっています。
新生代第四紀中期更新世((約50万年前頃)に活動したと考えられていますが,殆ど調査されていないので,正確性を含めて不明です。
「御岳」の東斜面には,大きな爆裂火口が存在します。山体崩壊の可能性が考えられますが,
発生した「岩屑なだれ」の大部分は海中なので,調査は難しいかもしれません。

那覇空港から福岡空港に向かう飛行機で撮影しました。。
中野(2008)によると,「小臥蛇島」の東側で噴気活動が確認されました。3Dイメージ,空中写真とも反対側になります。
また,第四紀完新世(約1万年前以後)に噴火活動があった可能性が指摘されており,その場合は「活火山」に分類されるかもしれません。
まとめに代えて

最も古い火山島は「宝島」と「小宝島」。次に古い火山島は「平島」と「臥蛇島」ですが,「口之島」と「中之島」は新期火山が活動しています。
やや新しい火山島は「悪石島」と「小臥蛇島」ですが,「諏訪之瀬島」は新期火山が活動しています。
なお,「小臥蛇島」の活動時期は,新しい可能性が指摘されています。
新期火山しか確認できないのが「横当島」と「上ノ根島」です。

【記事】
 ・「鹿児島県三島村」も「十島村」と同じく,鹿児島市に村役場が設置されており,「沖縄県竹富町は石垣市に役場が設置されています。

【参考情報】
 ・木庭 元晴ほか2氏:琉球列島,宝島・小宝島の第四紀後期離水サンゴ礁と完新世後期の海水準,地球科学,第33巻,第4号,pp.173-191.,1979年7月
 ・小林 哲夫:九州南方の離島の火山,Nature of Kagoshima,第34,pp.11-16.,2008年5月
 ・産総研・地質調査総合センター> 日本の活火山 > 諏訪之瀬島(火山地質図の閲覧が可能です。)
 ・下司 信夫・中野 俊:鹿児島県トカラ列島口之島火山の形成史と噴火活動履歴,地質調査研究報告,第58巻,第3/4号,pp.105-116,2007年
 ・中野 俊・下司 信夫:鹿児島県トカラ列島,小臥蛇島火山の概要,地質調査研究報告,第59巻,第3/4号,pp.197-201,2008年

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