北海道:サロベツ原野(湿原)
地形の特徴

・高層湿原,中間湿原,丘陵,河岸段丘,砂州,砂丘,後背低地

地形と地質の三次元イメージ : サロベツ原野(上サロベツ原野,下サロベツ原野)
‼マウスオーバー‼  地図上にマウスを乗せてください。産総研・地質調査総合センターの「1/20万 シームレス地質図(出典,下記)」を表示します。

かつては釧路湿原に次ぐ広大な面積を誇っていた「サロベツ湿原」ですが,現在では河川改修や排水路の整備で,往時の1/5ほどの面積(2560ha)となっています。
「高層湿原化」や「乾燥化」が進んでいることより,「原野」の方がふさわしい名前のように思われます。
海岸近くには海岸線に平行な「砂丘列」が存在し,内陸側には風向きに順応した「砂丘群」が分布しています。 いずれの砂丘にも「堤間湿地」が付帯しています。
北部では,海岸近くの砂丘列間に「長沼」などの長大な沼が存在し,南部では後ろ側の砂丘群の間に湿地が広がっています。
サロベツ原野は「天塩川」まで,と言われています。 その南端付近の海岸線では,人工改変等が行われているようです。
地形の三次元イメージ (上サロベツ原野その1)と現場写真(原生花園)

「上サロベツ原野」では,湿原に溜っている水の排水工事(河川改修)が行われ,図のようにかなりの部分が「牧草地」になりました。
手付かずの部分は,「長沼」や「ジュンサイ沼」などの「堤間湿地(沼地)」とその周辺の「砂丘:森林」及びラムサール条約の対象地だけのようです。
 画像をクリックすると,別ページで拡大画像を表示します。

「サロベツ湿原センター」が管理する展望台からの「上サロベツ原野」です。 画像右手,薄く見えているのが,「利尻富士」です。
日本最大面積の「高層湿原」とのことですが,現状は乾燥化が進み次の段階である「草原」になりつつあります。
遠くに見える黄色のベルトは「エゾカンゾウ=ゼンテイカ=ニッコウキスゲ」の群落です。 「水生植物」ではありませんが,湿地近くには咲きます。
地形の三次元イメージ (上サロベツ原野その1)と現場写真(日本海オロロンライン)

本図の範囲が,本来の「サロベツ湿原」なのでしよう。 しかし,内陸側では,「泥炭(ピート)」の採取や「河川改修(河道付替)」が行われました。
「パンケオンネベツ川」の周囲の大半や,海岸近くの砂丘列も「牧草地」になりました。 注 「P→」は,以下の写真の撮影場所と方向です。

「サロベツ原野」は,砂丘の上に生えている森の向こう側です。 空中写真によると,森の手前は牧草地のようです。
電柱がありますが,写真左側の農家に繋がっているのでしょう。
地形の三次元イメージ : 泥炭採取場跡地
‼マウスオーバー‼    地図上にマウスを乗せてください。独自に作成した「標高段彩図」を表示します。

「サロベツ湿原」で,「泥炭(ピート)」をを燃料として利用するため,1976年6月から下記の「浚渫船」を使って採取が始まりました。
「暖を取るため」とは言え,結果的に【湿原面積の縮小に寄与】したことになります。
現場写真 : 泥炭採取用浚渫船(展示物)

「サロベツ湿原センター」内に展示されている「浚渫船」です。 「泥炭」を採取するために使用されました。
採取した跡は水路となって周囲の地下水を集めるので,「低層湿原」から「高層湿原」へと変化した原因の一つになったことでしょう。
地形の三次元イメージ : 下サロベツ原野と天塩川の旧河道
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「天塩川」は,サロベツ原野の南の端を自由気ままに流れていたことが,標高段彩図から読み取れます。
自由蛇行が激しすぎて,個々の旧河道を特定することはできそうもありませんが,「長沼」は天塩川の「河跡湖(三日月湖)」であることは読み取れます。
海岸近くの「砂丘列」あるいは「砂丘群」の標高は7m以上あります。 津波に際して,優秀なバリアーになってくれそうです。
【記事,引用情報と参考情報】

【記事】

  • 参考図書では「サロベツ湿原」となっていますが,現状は湿原より草地の方が広いので,本ページでは「サロベツ原野」としました。
    従って,すでに「保存すべき地形(湿原)」は失われてしまったか,少なくとも失われつつある,と思わざるを得ません。
  • サロベツ原野は,北の「兜沼」の付近が標高7m~8mと最も高く,南の「天塩川」の付近が2m~3mと最も低くなっています。

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】