奈良県:室生火砕流の巨大な崩壊地形と亀山地すべり
        [日本の地質百選:室生・赤目(室生火山岩類)]
地形の特徴

巨大崩壊,崩壊地形,地すべり地形,湿原,還流丘陵

地形と地質の三次元イメージ :俱留尊山(くるそやま)~亀山の地すべり地形
三次元地形図上でマウスクリックすると「5万分の1 地質図幅『名張』(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

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  • 俱留尊山,香落渓,赤目四十八滝や室生川一帯は,「室生火山岩類」と呼ばれている,大規模火砕流起源の「(溶結)火山角礫岩」に覆われています。
    噴出した火山はわかっていませんが,噴出した時期は新生代 新第三紀 中期中新世(約1,400万年前)頃と推定されています。
  • 室生火砕流起源の火山角礫岩には,縦方向の柱状節理が発達しています。
  • 柱状節理は,柱と柱の結合力が弱いために,節理(亀裂)に入り込んだ水が凍結し融解する際に 節理が剥がれ落ちるという岩屑化現象が起きやすい上に,大雨や流水に対する抵抗力も弱いため,斜面の崩壊や川による侵食を受けやすい,という特徴があります。
  • 「俱留尊山」や「亀山」を結ぶ尾根は,この火山角礫岩(室生火山岩類)が侵食によって,馬の背状になっています。
  • 山稜の西に存在する断層,東西を流れる「名張川」と「青蓮寺川」の侵食作用,火山角礫岩の持つ柱状節理の崩壊傾向などが総合的に組み合わさって,斜面の崩壊や地すべりが多発したものでしょう。
  • 「お亀池」と「お亀湿原」は,「亀山(849m)」の西斜面で発生した大規模な斜面の崩壊あるいは地すべりで発生した「移動土塊」に,水が溜まって湿地化したものです。
地形の三次元イメージ : 亀山地すべりとお亀池
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  • 「亀山(849m)」の西斜面(奈良県側)には,「亀山地すべり」と呼ばれている地すべり地形が存在します。
  • 滑落崖と移動体との間は広い凹地になっており,その中心地には天水や地下水が溜ってできた「お亀池」があります。
    近年は,池から湿原へと変わりつつあるそうで,国土地理院の地形図(地理院タイル)では,発行ごとに池の形状が変化しています。
  • 産総研・地質調査総合センター発行の「5万分の1 地質図幅『名張』」では,亀山地すべりに関する記載はありません。
  • 図示した範囲の「青蓮寺川」は室生火山角礫岩地帯ではなく,その下位層である「海成層の新山粕類層(砂岩泥岩互層)など」地帯を流れています。
  • この場所では,下刻侵食よりも側方侵食が卓越しているようです。
地形の三次元イメージ : 俱留尊山,南東側斜面の巨大崩壊地形
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  • 俱留尊山の東斜面(三重県側)は「室生火山角礫岩地帯」の東の果てに近く,そこは落差400m程もある断崖絶壁となっています。
    大規模な岩盤(斜面)崩壊,あるいは地すべりによるものと考えられますが,詳しいことはわかっていないようです。
  • 防災科学技術研究所の「地すべり地形分布図によると,」中腹のテラス状の場所は「(地すべり)移動体」と判読されています。
  • 一方,産総研・地質調査総合センター発行の地質図幅『名張』では,テラスの表層は「崩積堆積物(c)」と評価されているので,断崖絶壁の原因は岩盤崩壊かもしれません。
  • 倶留尊山の北西側斜面には断崖ではなく,むしろ緩斜面と言ってもよいくらいの地形となっています。
地形と地すべり地形の三次元イメージ : 鎧岳・兜岳,南東側斜面の巨大崩壊地形
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  • 倶留尊山の西側を流れる清蓮寺川の反対側の「鎧岳」~「兜岳」にかけて走る稜線の南東側斜面も,倶留尊山に負けず劣らずの「断崖絶壁」です。
  • 倶留尊山と地質条件は同じで,地すべり地形分布図でも同様に,南東側斜面には「滑落崖」と「移動体」の記載がありますが,反対側斜面は緩斜面です。
  • 一方,「屏風岩」と呼ばれている連続する断崖絶壁の南東側~南側の斜面は断崖で,反対側の斜面は緩斜面となっています。
  • これらを総合すると,この付近の地形は略南側斜面が断崖で,略北側斜面が緩斜面という,一種の「傾動山塊」のような特徴があります(これ以上の考察はしていません)。
  • 兜岳から「横輪川」を挟んだ南側には「還流丘陵」の特徴を備えた地形が分布しています。 詳しくは以下のコラムを参照してください。
【参考】地形と地質の三次元イメージ : 兜山近くで見つかった還流丘陵らしき地形
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  • 地質図幅『名張』によると,現河床から100m~150mも高い所に「高位段丘堆積物(th)」の記載があります。
  • しかも,その分布は環状(の一部)を呈していることから,恐らくかつての横輪川はここを流れていた,すなわち 「穿入蛇行」の跡になりますね。
  • 「室生火砕流」が広範囲に分布していることにも驚かされますが,それを500m以上も掘り下げた「名張川」とその支流の「清蓮寺川」の掘削能力(下刻侵食力)にも驚かされます。
【引用情報と参考情報】

【引用情報】

【参考情報】

  • 参考図書:日本の地形レッドデータブック 第1集 新装版 -危機にある地形-,p.145,古今書院刊,2000年12月8日
  • 佐藤隆春ほか3氏:中新世の室生火砕流堆積物,地質学雑誌,第118巻,補遺,pp.53-69.,2012年9月
  • 吉田 史郎:奈良県曽爾村のお亀池,地質ニュース,586号,pp.58-61.,2003年6月

【お断り】

  • 本ページは,旧GUPIのウェブサイト「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地質百選 : 室生・赤目(室生火山岩類)」を「日本の地形千景 プラス:室生火砕流の巨大な崩壊地形と亀山地すべり」に統合し,事務局が「三次元地形図」,「三次元地質図」などを追加しました。
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