山形県・福島県・新潟県:飯豊山地の周氷河地形と山稜の凹地
地形の特徴

周氷河地形,周氷河性平滑斜面,山稜凹地,雪窪,非対称山稜,日本百名山

地形と地質の三次元イメージ : 飯豊山地の全景
三次元地形図上でマウスクリックすると「1/20万 シームレス地質図(出典,下記)」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。

1/20万 シームレス地質図 の主な凡例は,ここをクリックしてください。 別ウィンドウで表示します。
  • 新潟県,山形県と福島県の県境に位置する「飯豊山地」は,寒冷地による岩石の凍結融解による風化現象によって山稜(尾根頂部)が緩傾斜になったり,大量の積雪が原因で形成された「雪窪」が存在しています。
  • 飯豊山地の地質は,新生代古第三紀暁新世~始新世(約6千万年前~約4.5千万年前頃)に,日本海の海底?で生まれた「花崗閃緑岩・トーナル岩」です。
  • 飯豊山地の特徴は「第四紀以後の隆起」です。 すなわち,海底から陸地へ,更に2,000m前後の山地へと隆起し続けているのです。
  • 山地の隆起は,谷川の侵食力の増加を促進するので,飯豊山地の谷は深い「V字谷」へと変貌を遂げました。
  • 主稜は「北西-南東方向」に伸びており,支尾根(支稜)はそれに直行する方向に発達しています。
    ただし,飯豊山地の最高峰大日岳(2,128m)から飯豊(本)山(2,105m)へ延びる稜線は本来主稜なのですが,支稜の方向に一致しています。
  • 主稜や支稜の多くは,季節風の風上側の斜面の傾斜が若干緩く,風下側の斜面の傾斜が若干急,という「非対称山稜」の特徴があります。
    風上側の斜面では積雪は少ないため融雪水の侵食力は弱いのに対し,風下側斜面では積雪が多いため融雪水による侵食力が大きく「ガリー」が発達しやすいのです。
地形と空中写真の三次元イメージ : 飯豊(本)山~御西岳の周氷河及び雪窪地形
三次元空中写真上でマウスクリックすると「最新・シームレス空中写真」を表示します。 ダブルクリックで元に戻ります。
  • 飯豊山地の地質は,中生代後期白亜紀の「花崗閃緑岩類(塊状)」です。 一般的に花崗岩類は,「節理=亀裂」に浸み込んだ雨水による風化によって,「マサ」と呼ばれる砂に変わりやすく,これがなだらかな起伏を生む原因と考えますが,どうでしょうか?
  • 残雪のある場所や同様の窪みが「雪窪(nivation hollow):雪食凹地」と考えられます。 しかし,
    「地理院タイル(地形図)」と「標高タイル」による三次元イメージでは,窪みが浅すぎてその存在を見つけることはほぼ不可能です。
  • 雪窪 : 積雪起因の侵食作用によってり形成される凹地です。 四季を通じて存在するような残雪の下底や縁辺に形成される傾向にあります。
地形の三次元イメージ : 北股岳~門内岳の周氷河及び地すべり地形
  • 北俣岳から門内岳に向かう山稜の新潟側(図の上側,季節風の風上側)には,凍結・融解により岩屑化した礫や砂が形成した「階段状構造土(階状土:構造土の一種)」が存在する,と言う情報がありますが,本三次元地形図の解像度では可視化できません。 階状土のでき方は,
  • ① 水分を含んだ砂礫・砂・粘土などが凍結する際,含水量の多い程大きく膨張します。
  • ② そして,膨張の程度差によって他の砂礫などを押しのける,という現象が発生します。
  • ③ これが長年繰り返されると,平地ならば亀甲型(六角型)構造土,条線土,山稜凹地など,斜面ならば階段状構造土(階状土)などが形成されます。
  • 「門内池」は,このような営力によって形成された「二重山稜」の間の窪地(凹地)に天水が溜ってできたものでしょう。
  • 一方,北俣岳の南斜面(図の左側斜面)には,3箇所の小さな池が存在します。 (独法)防災科学技術研究所の「地すべり地形分布図」によると,この斜面には地すべりの可能性が指摘されているので,地すべり起因の凹地に天水が溜まったものかもしれません。
地形の三次元イメージ : 文平ノ池(地すべり性凹地)
  • 「飯豊本山」から南西に延びる主稜上に存在する「文平ノ池」は,今からおおよそ4000年以上前,「飯豊川」の源頭部に地すべりが発生し,その頂部にできた凹地に雨水が溜まったものだそうです。
地形の三次元イメージ : 北股岳~御西岳間の稜線上の小さな池
  • 飯豊山地のうち,北股岳~御西岳間の山稜には,凹地に雨水が溜まってできたと思われる「池」が4箇所存在します。
  • 凹地の生成は,地すべりに起因するケース,岩石の凍結融解による岩屑化に起因するケースなどがあります
  • これらのうち,「A池」と「C池」は地すべり性の凹地のようですが,「B池」と「D池」の成因については残念ながらよくわかりません。
【現場写真】

吾妻火山群の最高峰,西吾妻山(2035m)からの眺望です。 飯豊山地まではおおよそ50kmあります。
飯豊山

この登山ルートは,深田久弥の登山ルートを一部再現しました。
  • 飯豊山地は,人跡稀な山奥に立地しているため,徒歩による登山開始までも多くの時間を有する,という気楽に登れる山ではありません。
  • 深田久弥は,新潟県の「雲母(きらら)温泉」を出発したことはわかっていますが,どこから自分の足で歩きだしたかが,定かでは無さそうです。
  • このため,荒川水系大石川の東俣川の「松沢出合」やや上流を登山開始点とするルートをトレースしてみました。
  • 途中,「千本峰(1164m)」を経由して「朳差岳(1615m)」までの急登を登りきると,ようやく主稜の一角にたどり着くことができます。
  • しかし,ここはまだ序の口,主峰の「飯豊(本)山」までの長い尾根歩きが待っているのです。
  • それは数値にも表れていて,車を捨ててから飯豊(本)山まで歩く距離が約27kmです。
  • 単純な標高差は1,860mなのですが,途中下り坂も随所にあるので,結局登るべき高さは実に3,700m超と,標高差の登った高さの2倍を超えてしまう,と言う,健脚者でも15時間以上は掛かる,という長丁場なのです。
【引用情報と参考情報】

【記事】

  • 山稜の西側斜面(周氷河作用): 氷期から現在まで,冬季に吹き付ける西風により,西側の斜面では雪が吹き飛ばされて積もりません。
    岩盤中の水が凍結・膨張することで岩屑化し,風の力も借りて移動するので,斜面は傾斜があるものの凸凹は平均化され「周氷河性平滑斜面」となります。
  • 山稜の東側斜面(氷食・雪食): 季節風の吹き溜まりとなって積雪が多くなります。
    過去の氷期においては,雪が凍ってできた氷河(状)の氷が下方に移動することによる氷食と運搬によって,斜面は急傾斜化しました。
    現在は,積雪のために凍結融解による周氷河作用は起きにくい代わりに,(雪田の)融雪水による侵食のほか,雪崩による侵食も考えられます。

【引用情報】

【参考情報】

【お断り】

  • 本ページは,旧GUPIのウェブサイト「地質情報ポータルサイト」で公開されていた「日本の地形千景プラス:飯豊山地北股岳の周氷河地形」と同「飯豊山地の山稜凹地」を統合し,「日本百名山」に関する若干の記事などを追加したものです。
  • 改訂に当たっては,内容の間違いなどを訂正しました。
  • 本サイトの概要については ここをクリックしてください