チンパンジーにも見える? 類型:怪獣
  化物岩(ばけものいわ) 北海道上富良野町
謂われ,特徴,エピソード等

 十勝岳の山々において安政火口などの名前を付けた,故会田 久左エ門が「化物岩」と名付けたと言われています。 なお,故会田 久左エ門は,十勝岳温泉を開発したことで知られています。

 写真にあるように,化物岩の下には「崖錐堆積物」が分布しており,その中には多くの空隙(空洞)が存在します。

 化物岩直下の空隙(空洞)中の空気は,地中の冷熱により冷却されて下方へ移動し,下の穴から冷気が吹き出すという「風穴」が形成されています。

 このような風穴には,暑さが苦手な「氷河期の生き残り」と言われるナキウサギが生息しており,時折その鳴き声があたりにこだまします。 

地形・地質の概要

 上ホロカメットク山(1920m)は,北からオプタテシケ山,美瑛富士,美瑛岳,十勝岳(2077m),上ホロカメットク山,上富良野岳,富良野岳,前富良野岳や下ホロカメットク山などから構成される「十勝(岳)火山群」に属しています。

 十勝火山群は,大きく見て古期,中期,新期の3つの時期に区分されています。

 古期: 新生代新第三紀~第四紀前期(約100万年前); 流紋岩・デイサイト質溶結凝灰岩などの噴出によって,基盤岩が形成されました。

 中期: 第四紀中期(約30万年前)以降; 苦鉄質*安山岩質の成層火山や安山岩質の成層火山が複数噴出しました。

 新規: 約6万年前以降; 十勝岳の安山岩質溶岩円頂丘の形成や新火口ができました。

 化け物岩は,約6万年前に噴出した上ホロカメットク山溶岩類(安山岩質)そのものです。

 注 *苦鉄質(くてつしつ): 有色鉱物(カンラン石,輝石,角セン石,黒雲母など)を多く含むため黒っぽい色をした火成岩のことです。


化け物岩の全景 左は,八ツ手岩と上ホロカメットク山。
化け物岩の左下は,風穴のある崖錐堆積物

十勝岳温泉からの化け物岩と安政火口方向
奇岩近傍の三次元地形イメージ

「化物岩」は,「安政火口」ができた後, 「上ホロカメトック山」が噴火した時に噴出した溶岩が固まったものとされています。
化け物岩の直下から「安政火口」にかけては,より年代が古い時に活動した「三段山火山噴出物」が堆積しています。
また,安政火口そのものは山体崩壊で生じたものですが,その後の侵食・崩壊により,生成当時よりかなり拡大していると思われます(想像)。
周辺のジオサイトや観光地

十勝岳ジオパーク,美瑛・上富良野エリア
  この奇岩は,十勝岳ジオパークの「美瑛・上富良野エリア」にあります。

☆ジオサイト
  ★十勝岳: 十勝岳の北西側には新期のグラウンド火口,中央火口丘,摺鉢火口丘などがあります。
    また,1926年噴火の大正火口や1962年噴火の火口(62-Ⅰ及び62-Ⅱ火口)では噴気活動が盛んです。
  ★安政(ヌッカクシ)火口: 十勝岳温泉から徒歩約30分にある噴気を伴う火口です。
    十勝岳では安政4年に大きな噴火がありましたが,様々な証拠によりこの「安政火口」では無かったことが証明されています。
  ★日本の奇岩百景「夫婦岩」: 十勝火山群の一つ三段山の中腹にあります。

☆観光地
  ★十勝岳温泉: カルシウム・マグネシウム硫酸塩泉などが湧出し,利用するホテルが営業しています。
  ★白金青い池: 十勝岳が1926年5月に噴火した際,積もった雪を溶かして大規模な火山泥流(大正泥流)が発生しました。
    このような泥流災害を防ぐために,美瑛川本流に堰堤が複数建設されましたが,そのひとつに水が溜まったものです。
    池の水に含まれる水酸化アルミニウムなどが分解されてコロイド状になり,その粒子による散乱のために青色に見えます。

交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道: JR上富良野駅で下車。 駅前より上富良野町営バス十勝岳温泉行きに乗車して,終点で下車します。
  • 自動車: 道央自動車を滝川ICで下り,国道38号~同237号で上富良野町へ進み,道道吹上・上富良野線に進み,十勝岳温泉まで走行してください。
  • 十勝岳登山ルート: 十勝岳温泉登山口 ⇒ 三段山分岐 ⇒ 富良野岳分岐 ⇒ 上富良野岳 ⇒ 上ホロカメットク山 ⇒ 十勝岳
記事,引用情報,お断りなど

【記事】
 ・安政(ヌッカクシ)火口の原形は,三段山火山の活動が収まった後の「山体崩壊」によってできました。
  その時流れ出した大量の岩屑は,「ヌッカクシ富良野川岩屑なだれ堆積物」として,山腹に堆積しています。

【引用情報・参考情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約
 ・産総研・地質調査総合センター > 十勝岳火山地質図

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

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