本当にそっくりです 類型:神仏
  ちちさま[乳古良石(ちごらいし)] 和歌山県
 田辺市本宮町
謂われ,特徴,エピソード等

 ほぼ同じ大きさの2つの丸石が横に並んでおり,張りのある豊かな乳房を思わせます。
  乳の少ない婦人が立願すると乳が出るようになると伝えられる,人が祈りを捧げた奇岩です。
  各地に「乳岩」などの名で呼ばれる岩はありますが,これほど見事な乳の岩は他にないのではないか,と思われます。

  江戸時代の紀伊国の地誌『紀伊続風土記』には「ちごら石」と記され,「音無川の上山中にあり。 竪四間横六間の石なり。 真中に乳の形二あり。 乳少き婦人立願すれば自然に乳出づといひ伝ふ」とあります。
  「母乳に見立てた長さ1尺の12本の白い糸に,餅や菓子を添えてお供えしてお願いしたという」,謂われが残っています。
  子育ての神様として信仰されました。
地形・地質の概要

 5,000万年前に海溝付近の深海に砂や泥が積もってできた「音無川層群(古第三紀の付加体)」に存在するノジュールです。

 向かって右のノジュールの直径はおよそ46cm,向かって左のノジュールの直径はおよそ40cmです。 2つのノジュールの間の距離は,およそ12cmです。

 ほぼ同じ大きさの整った球体をしているノジュールが,女性の乳房のように2つ横に並んでいることは,とても珍しく貴重で,奇跡的です。

 女性の胸は通常,左胸の方が大きいとされますが,ちちさまも左胸(向かって右)の方が大きく,自然の造形の不思議を感じさせられます。


ちちさま 近景

ちちさま 遠景
奇岩近傍の三次元地形イメージ

「熊野本宮大社」の付近は,新生代古第三紀始新世(約5,000万年~4,000万年前頃)の「泥岩砂岩互層」で,前期漸新世の頃に「付加体」となった地層です。
この付近は断層が密集しており,場所によっては同時代の「砂岩層」へと変化しています。
周辺のジオサイトや観光地

南紀熊野ジオパーク
  『プレートの沈み込みに伴って生み出された3種類の大地,それらが作る独特の景観,温暖湿潤な気候がもたらす多種多様な動植物,そしてそこから生まれた熊野信仰や筏流しなど,数多くの優れた自然や文化を体感できるところです。』

☆ジオサイト
  備崎磐座群: 熊野本宮大社の旧社地「大斎原」の対岸にある磐座(いわくら)群です。
      側には,平安時代から鎌倉時代にかけて整備された「経塚」があります。
  瀞八丁: 和歌山県新宮市から奈良県十津川村にまたがる瀞峡の下流部にあたり,熊野川水系北山川の玉置口・洞天門~田戸までの区間をいいます。
    峡谷の両岸には,高さ約50mの断崖が連続する日本屈指の景勝渓谷です。 国の特別名勝と天然記念物に指定されています。

☆観光地: 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」
  熊野三山: 熊野本宮大社(熊野坐神社),熊野速玉大社,熊野那智大社という3つの神社の総称です。
    元々,仏教的要素が多いのが特徴で,全国に約3千社ある熊野神社の総本社です。 
  熊野古道: 熊野三山に詣でるための参詣道の総称で,奇岩近くの古道は,田辺から直接熊野三山に至る中辺路です。
    また和歌山県内には,串本を経由する大辺路があります。
  音無川: ちちさまの近くを流れる音無川は,かつては熊野詣といえばその名が思い浮かばれるほど名高い川で,歌枕となっています。
    はるばるとさかしき峰を分けすぎて音無川をけふ見つるかな(後鳥羽院)

交通概要(公開時の情報)
  • 鉄 道: JR新宮駅から熊野本宮大社行きの熊野交通バスなどに乗車。乗車時間約1時間15分の終点で下車。 徒歩約20分で,奇岩に到着します。
        田辺駅からも竜神交通バスがありますが,本数が少ないので注意が必要です。。
  • 自動車: 和歌山方面からは,阪和自動車道の「南紀田辺IC」を経由して,国道42号で朝来まで。国道311号に入り,本宮町の大日山トンネル出口で
        国道168号を左折すると,すぐ熊野本宮大社です。
        三重方面からは,紀勢自動車道の「熊野大泊IC」を経由して,国道42号で新宮まで。 国道168号で熊野川に沿って上流へ向かいます。
引用情報,お断りなど

【引用情報】
 ・国土地理院 > 地理院タイル(地形図,5m・10mDEM)  国土地理院利用規約

【お断り】
 ・奇岩の地図は「奇岩近傍の三次元地形イメージ」に変更しました。地形図については,地図検索のページをご覧ください。

Powered by GeoInformation Potal Hub(GIPH),2020(2022/12 改訂) Lightbox Plus